2007/08/15

フランチャイズ・トラップ:最初から織り込まれたリスク

コロちゃん自己破産:驚き、途方に暮れるフランチャイズ店主 /岐阜(毎日新聞)
「コロッケ小売りチェーンの「コロちゃん」(本社・恵那市)が12日、名古屋地裁に自己破産を申請した問題で、フランチャイズで店を経営する店主らは「まったく知らなかった」と驚き、途方に暮れた。岐阜市内に店舗を構える女性店主(68)は自己破産を全く知らず、この日も通常通り店を開いた。店主は「今日も発注のため代金を振り込もうとしたが、本社の役員にも電話が通じず、おかしいと思った」という。店は3年前に開業。今月1日に無償で店舗を譲り受けるとする契約を交わしたばかりだった。店主は「先月に2回、本社が配送業者に代金を払えず、発注した商品が店に届かなかった」と本社の経営が苦しいことには気付いていたという。」

中小小売商業振興法の11条1項をごらんください。

11条

「1 連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるものを行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。

1.加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
2.加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
3.経営の指導に関する事項
4.使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
5.契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
6.前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項」 

フランチャイズ契約とは、商品の製造会社、あるいは主宰会社が、加盟店に対して、地域的一手販売権を与える契約のことをいいます。

主催者がフランチャイザー、加盟者をフランチャイジーです。

その契約には単なる商材の卸と小売りの関係に終わらない、主宰会社のもつ商標権、販売ノウハウ、調理ノウハウの使用許諾、一括宣伝の実施等までもが含まれているのが普通です。

加盟者はまさにそういったものを頼りに、主催者の説明を信頼して契約を締結します。

よってフランチャイザーには、客観的かつ正確な情報を提供する義務があるとされています。(京都地方裁判所 平成3年10月1日)

実際の交渉過程では、法令等による情報開示のほかに加盟後の売上げ・利益の予測に関する情報を提供していることが多いといいます。

フランチャイザーにとって加盟しようとするフランチャイジーの加盟金は運転の原動力ですので、契約する意欲をあおるため非常に楽観的な売上げ予測の説明がなされることも少なくありません。

自然、加盟開業後にその予測どおりに事業が展開せず、損失の生じたフランチャイジーがフランチャイザーに対して損害賠償請求をする裁判例も少なくなくないのです。

フランチャイザーの示した売上げ予測の責任を肯定した事例としてパン製造販売(京都地裁 平成3年10月1日)、クレープ販売(東京地裁 平成5年11月29日)、乳酸菌飲料販売(浦和地裁川越支部 平成7年7月20日)、持帰り弁当(名古屋地裁 平成10年3月18日)、サンドイッチ(東京地裁 平成11年10月27日)、コンビニ(名古屋地裁 平成13年5月18日などがあります。

平成に入るころから、フランチャイザーの説明責任を肯定する裁判例は増え始めています。

フランチャイザーがフランチャイジーに不適正な情報を与えて契約締結の判断を誤らせることがないようにする信義則上の保護義務に違反すれば、フランチャイザー、つまり本部は損害賠償責任を負うということが認められています。(以上参照:商法(総則商行為)判例百選 (別冊ジュリスト (No.164))

フランチャイズ契約は、経営初心者にとって独立の際に頼りがいのある大きな梯子にもなりえます。

しかしもし契約の際に誠実な説明がなされなければ、単に消費者として損害を被るよりも、さらに深刻な損害を負う可能性も、フランチャイザーという立場には織り込まれているのです。

 

 

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2007/05/29

データとデータ処理だけでできている、この世界

Google im Visier der EU (netzeitung.de)
「Google speichert unter anderen den Suchbegriff und die IP-Adresse des Computers, von dem die Anfrage kam. Bisher behielt Google die Daten aufunbestimmte Zeit vor  wenigen Wochen willige das Unternehmen jedoch ein, die Speicherzeit auf zwei Jahre zu begrenzen.」

(私訳)

欧州連合に監視されるグーグル

「グーグルは個人の検索ワードとIPアドレスを社内に留保している。これまでグーグルはそのデータを際限なく社内に保存していたが、数週間前、自主的に個人データの保存期間を最大で2年間に限った。」

世界人権宣言の12条をごらんください。

第12条 [私生活および名誉の保護]

「何人も、自己のプライバシー、家族、家庭もしくは通信に対してほしいままに干渉されてはならず、名誉および信用に対して攻撃を受けてはならない。人はすべて、このような干渉または攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。」 

わたしやあなたの自宅のパソコンのIPを記録され(つまり個人を半特定された上)、そのIPからタイプされた検索ワードが、Googleに限らず企業のデータベースに保存される場合、どのような事態が想像されるでしょうか。

いちばん穏やかなデータ利用方法としては、”検索ワード”面から、特定商品、特定サービスのマーケティングとして複次利用されることが想像できます。

しかしより考慮すべきなのは、検索ワードとはそのときのわたしやあなたの興味の先、つまり心の動向の記録にほかならないという、事の本質です。

たとえば”特定IP”面から、つまりだれか一個人の、一生分の検索ワードをもとに個人の思想を分析・提供・追跡されるような事態が起こるなら、まずどこから異議を申し立てればいいのかさえ見当がつきません。

EUは「個人データ処理に係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関する欧州議会及び理事会の指令」という独自基準を定め、また国連は世界人権宣言の12条や、国際人権規約B規約の17条で、プライバシーの保護を求めています。

今や下は氏名、住所など端的な情報から、上はDNAまで、わたしやあなたのあらゆる属性はデータに換言されて磁気情報として保存されることが可能となりました。

あとはそれを管理するルールを、どのような原理で駆動する機関に委ねるのかだけにかかっています。

 

 

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2007/05/21

ビジネスと詐欺のあやふやな境界

“ヤフオク詐欺”無罪確定 (デイリースポーツ)
「インターネットの競売サイト「ヤフー・オークション」に出品し、落札者約70人に商品を発送せず代金計約600万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた無職女性(37)=神戸市=を無罪(求刑懲役五年)とした神戸地裁判決に対し、神戸地検は19日までに控訴を断念、無罪が確定した。「発送するつもりだった」と主張した女性の弁護側は「破産し、神戸地裁から債務免責を許可されており、今後も被害弁償の予定はない」と話している。」

破産法265条1項をごらんください。

第265条(詐欺破産罪)

「1 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一  債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為
二  債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三  債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四  債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為」 

[以下、刑事法の理論と実践―佐々木史朗先生喜寿祝賀中の論文、”詐欺破産罪の図利加害目的に関する一考察 伊藤亮吉”を参照させていただきます]

破産法は第一に債務者が永遠に責め立てられることを防止するため、第二に債務者の財産を債権者に公平に分けるための法律ですが、破産に際しては債務者が財産を隠す等行為に走る場合が多くあります。

そのため詐欺破産罪は、債務者が「債権者を害する目的で」すなわち図利加害目的で破産財団に属する財産の隠匿、等をして、破産宣告が確定した場合に債務者を処罰することにしています。

破産を申し立てた後の債務者が無茶な取引をすることはもちろん許されませんが、破産申立前の債務者は、一応一般人と同様なのでその財産の処分を全て禁止することはできません。

つまりその段階では、債務者があえて財産上危険な取引に出てもそれを禁ずることは権利義務が帰属する一般人として見れば一応できません。

しかし債務者自身は将来破産宣告がなされることが予見可能であり、総債権者のために信義則にしたがって行動する義務があります。

よって詐欺破産罪規定の行為をすることはこの義務に違反することになります。

破産申立前の債務者が行う冒険的取引は、その債権者に対する危険度を考えれば、およそ経済活動の範疇に入る行為とはいえないのです。

結局、破産宣告前の取引を適法と呼ぶかどうかは、図利加害目的の有無によって決定されることになります。

学説上は争いがあるものの、判例理論上は、目的犯にいう”目的”を「ほぼ全体を通じて未必的な認容で足りる」としています(最高裁 昭和29年11月5日)。

しかし実務では、詐欺破産罪をはじめ、破産犯罪が適用される事案はかぞえるほどしかないといいます。

人の心は不定形で、その中身を法廷の場では証明しがたいからです。

(ポリグラフ検査さえ、厳密に言えばウソ発見器などという魔法の器械ではありません)

もちろん本件被告女性の真意も、誰も証明することができない以上確かに無実なのかもしれません。

ただもし故意以上の”目的”が要件である罪をすり抜ける術があるとすれば、それは”目的などなかったのだ”と、自分自身さえ説得し切ることにあるといえます。

 

 

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2007/05/16

轍の深さは報いの所以

食事中の女性客を拉致し暴行、ステーキ店長ら逮捕…大阪(読売新聞)
「大阪・ミナミのステーキチェーン店「ペッパーランチ」心斎橋店で、食事中の20歳代の女性客を拉致し、乱暴するなどしたとして、大阪府警南署が、同店店長北山大輔(25)(泉佐野市)、店員三宅正信(25)(大阪市西成区)の両容疑者を強盗強姦(ごうかん)と逮捕監禁致傷の疑いで逮捕していたことがわかった。2人は「女性を囲っておくつもりだった」と供述しているという。調べでは、北山容疑者らは9日午前0時20分ごろ、大阪市中央区の心斎橋筋商店街近くにある同店で、閉店作業を装って店のシャッターを閉め、1人で食事中だった女性客を「逃げたら殺す」とスタンガンで脅し、無理やり睡眠薬を飲ませて泉佐野市内の貸しガレージまで車で連れ去って乱暴したうえ、5万5000円入りの財布を奪った疑い。当時、店内には他に客はいなかった。女性はその後も手足を縛られたままガレージに止めた車の中に監禁されていたが、同9時すぎ、自力で脱出して近所の人に助けを求めた。通報を受けた同署員が、事件後に再び出勤していた北山、三宅両容疑者を任意同行し、逮捕した。」

民法の715条1項をごらんください。

715条

「1 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」 

使用者責任とは、事業のために従業員を使用する会社は、従業員が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償しなければならないという責任のことをいいます。

その責任を法人に負わせる根拠は、使用者は被用者を使って利益を得ているのであるから、損失もまた負担させるのが衡平に適するとする報償責任の考え方を基礎にして、代位責任とする説が通説です。

民法715条によって使用者が被用者の不法行為について責任を負うためには、被用者の行為が「その事業の執行について」なされたものでなければなりません。

従業員がやらかした行為が、事業の「執行について」にあたるかどうかについて、判例は行為の外観上職務の執行とみられる場合であるとする、いわゆる外形標準説を採用し、広く解するようになっています(大正15年10月13日判例)。[参照:有斐閣法律学小辞典 第4版]

企業が競争原理によって提供するビジネスは、社会にたくさんの幸福をもたらしてくれます。

同時に企業が社会に残す大きな轍は、その内輪の大きさゆえにしばしば社会へ甚だしい危険をもたらしているのも、また事実です。

一人一人の従業員には必ずしも損害を賠償する能力が十分でない反面、企業自体はその従業員を使用することで大きな果実を収穫している点を考慮して、この企業活動から生じる損害は、企業に賠償させるのが損害を受ける社会に対して公平であると考えられるのです。

そして使用者があらかじめ毎日の従業員の活動に対して負っている責任は、故意・過失がなくてもかぶってしまう、いわゆる無過失責任です。

不確定要素を多く隠した人間という存在を可能な限り取り入れることで、収益を可能な限り大きくしようという経営者なら、そこにつきまとう無過失という重い責任を皆理解しているはずです。

フランチャイズという、経営システムの複写によって収益を上げる形態を採用したステーキチェーン店の代表者には、責任も複写されて返ってくることになります。

 

 

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2007/05/07

法の形式性という淡い祈り

<コースター事故>脱線で女性死亡、乗客ら34人搬送 大阪(毎日新聞)
「同社によると、年1回は分解して超音波や磁石を使った解体点検も行っていたが、直近は昨年1月で、「(今年は)3カ月半遅らせても大丈夫」と判断し、今月15日に実施する予定だったという。法的には問題ないが、遅らせた理由について同社は「新アトラクションを建設する影響で、車体を解体するスペースが確保できなかった」と説明した。折れた車軸については、92年の製造以来、交換したことがなかった。」

建築基準法の12条3項をごらんください。

第12条

「3 昇降機及び第六条第一項第一号に掲げる建築物その他第一項の政令で定める建築物の昇降機以外の建築設備で特定行政庁が指定するものの所有者は、当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。」 

建築基準法が要求する定期報告制度とは、建築物や、その設備、またエレベータのような施設について維持管理が適切になされているかどうかを、有資格者が調査・検査し主務官庁に報告させる制度です。

多くの人が利用する建築物や、エレベーター、エスカレーター、また遊戯施設であるメリーゴーランドやジェットコースターなども対象になっています。

あらゆる構造物は経年により当初の強度を失っていきますので、高い負荷を長期間受け続けるエレベータやジェットコースターの定期点検が実質的になされていなければ、事故は不可避に起こるといえます。

建築基準法12条3項は、人の知恵で組み上げた建築物の強度を、人の勤勉で維持しようという条文です。

その報告義務を違反すれば、50万円以下の罰金ですが、建築基準法が形式的に強制できるのはそこまでであり、建築許可が下りたあと、定期検査をどのような間隔で報告するかや年間の検査コストをどこまでかけるかなどは事業者の自由意思に一任されています。

その条文があくまで検査の形式性を要求するのみで終わっているのは、それが人が過去犯してしまった罪を社会が慎重に裁こうとする必要的な実質性を要求するものではなく、人の未来を誠実につくろうとする性質への信頼が基礎にあるからです。(私見)

一から十まで法律に指図されなければ施設からいつまでも事故が消えないのだとしたら、わたしたちの暮らす国の空気はこれから随分みじめになるはずです。

 

 

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2007/04/14

背番号は90、民法の遊撃手

「1センチ105万円で身長伸ばす」効果なかったと提訴(朝日新聞)
「訴状によると女性は、同社代表取締役の院長から直接説明を受けて06年7月末に身長が3センチ伸びる施術を契約。東京・銀座の本院で7~11月に月1回、機械に乗って施術を受けたが、効果はなかった。同社は最初の施術の前後に撮影したエックス線写真を示し「下腿(かたい)骨が3センチ余伸びた」と説明していたという。女性側は「医学的に荒唐無稽(こうとうむけい)」「誤信させるため、画像の倍率を操作した疑いがある」とし、「公序良俗に反した契約は無効」と訴えている。」

民法の90条をご覧下さい。

第90条

「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」 

公序良俗違反とは、社会常識上、妥当性を欠いている行為だとする法的評価のことです。(私的定義)

社会常識といっても、その基準は時代や場所によって激しく変動し、これ以上抽象的にならざるをえない概念もありません。

なぜなら公序良俗を裁判官がどう定義するかによって、法廷に於ける結論は右にも左にも転ばせることができることになるからです。

しかも取引がもし公序良俗違反だと評価された場合、その契約は無効になるため、その言葉に裁判官による規定が徐々に蓄積されていくと、市民社会を潤滑させている”契約の自由”は自然徐々に後退することになります。

それゆえ公序良俗濫用の危険性は、民法90条立法当時から意識されてきました。(参照:公序良俗入門 渡部晃 商事法務研究会)

それは「感覚的にいってマズい取引なら、無効にする」といっているのも同然だからです。

にもかかわらず民法の90条、公序良俗違反はこれまで数え切れないほど裁判のなかで重要な役割を果たしてきました。

私的自治社会では、「法文の規定があるギリギリのところまでは、食い散らしてもよい」と解釈して商う輩が絶えないからです。

たとえば景品表示法4条1項1号、優良誤認表示に該当して排除命令を受けたものの例では、アサヒフードヘルスケアが錠剤型食品を販売するにあたり、「100%天然アセロラ」を繰り返しうたっていたにもかかわらず、実際にはそのビタミンCの大部分がアセロラ果実から得られたものではなかった例などがあります。(参照:景品表示法 菅久修一 商事法務)

優良と誤認させる表示を纏った商品に私たちが対価を支払わされるなら、私的自治社会の根本を駆動させる「意思決定の尊重」原理は、徐々にその方向性を誤ってしまうことになります。

公序良俗違反という概念にあえて形が与えられていないのは、そうした常識社会に散出する”逸脱”に反応し、それを自由に遊撃するためだといえるかもしれません。(私見)

 

 

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2007/04/10

胴元は必ず勝つ

生保保険金不払い「根が深く、広がりも」・金融庁長官が批判 (日経新聞)
「金融庁の五味広文長官は9日の記者会見で、生命保険会社による保険金の不払い問題について、「事柄の根は深く、広がりも大きいので、全容を解明するのに時間がかかる」との認識を示した。生保各社は13日に金融庁による不払い調査命令の報告期限を迎えるが、「仮に期限までに調査を完了できない企業が出た場合、理由や調査完了時期を確認し、状況に応じて適切に対応する」と説明した。 生保の不払い問題は明治安田生命保険で2005年2月に表面化したのがきっかけ。2年超かけても全容を解明できない原因について、五味長官は「経営陣の認識が甘かったことで初動の遅れを決定的にした」と批判。「経営陣がそもそも知らなかったことから始まっている」とも指摘し、事態の深刻さを強調した。」

民法の96条1項をごらんください。

第96条

「1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」 

あなたが、間違って多いお釣をレジでもらって、それを告知しないで交付を受けとったとしましょう。

この場合、実は法律上、釣銭が余分ですよといわなければならない信義則上の告知義務があります。

そしてこの告知義務を怠ってもし釣銭を受け取ってしまえば、それは相手方の錯誤を利用して財物を領得した詐欺になってしまうのです。

さてそれでは、保険契約加盟者が病名を隠して契約する場合も詐欺と呼ばれるべきでしょうか。

そもそも生命保険における告知義務とは、病名など保険料の決定について重大な影響を及ぼす事項について、保険契約者が保険会社に報告し、嘘をつかない義務のことです。

たしかに一般的には、保険者がそのことを知ったならば契約を締結しないか、あるいは少なくとも同一の条件では契約を締結しないであろうと客観的に考えられる事情を告げなければ、加入者側には告知義務違反があるといえそうです。

そして告知義務違反がある場合には、保険会社は解除権を取得し、もし支払った保険金があるのなら理論上、その返還を請求できます。

ところで民法96条1項は、もし詐欺にあった場合その人は意思表示を取り消せると決めていますが、生命保険約款という保険会社を保護する取り決め上は、さらにこれを強力にしています。

つまり”もし詐欺で保険契約が締結された場合契約は無効で、しかもそれまで毎月払い込まれた保険料は返さない”としているのです。

ここで本来、保険会社が告知義務違反による解除権を行使できるのは商法644条によれば契約成立から5年以内に制限されていることを思い出しておく必要があります。

その条文は、解除権という法律上の強権をいつまでも存続させておくことでお互いの法律関係を長期間不安定にする社会的不利益を回避したものです。(私見)

しかし告知義務違反による保険契約締結を、もし保険会社が「われわれはまた詐欺にかかった!」と呼ぶなら、保険会社は商法上の解除権に関する縛りを無視して、いつまでも保険金の支払いを回避、保険料の不返還が可能になります。

これは保険会社にとって、”収益のスーパーチャージャー”のような発想です。

そもそも保険契約を獲得しようとする保険外交員のおばさんは、加入しようとしている人の軒先で「そんなもの、あえて告知なんてしなくてもいいよ」というありがたいトークで契約を獲得することも多いといいます。

加えてもし営業員に病名を告知していたとしても、保険会社は「営業員には告知を受領する権限がない」と常に言い、もし契約2年以内なら告知義務違反、あるいは2年以上たっていたら詐欺無効で保険金支払いを回避しようとするのです。

実際、金融庁が2005年2月25日に発表した、「明治安田生命保険相互会社に対する行政処分について」は、「生命保険募集人が、重要事項の説明を行っていない、不告知を教唆するなど、保険業法第300条第1項第1号及び同項第3号に違反する保険募集を行っていたものと認められた。さらに、同社は、生命保険募集人が法令違反の募集行為を行っていたことを把握しながら、保険業法第127条第1項第8号に基づく不祥事件届出を、不祥事件の発生を知った日から30日以内に行っておらず、同条に違反していたものと認められた。」と指摘しています(参照:生損保「踏み倒し被害回避」マニュアル 佐藤立志 講談社)

通説上、民法でいう詐欺が成立するには相手を騙して錯誤に陥れようとした第一の故意、そしてその結果相手に意思表示をさせようとした第二の故意が必要です。

保険会社と契約者、いったいそのどちらについて構成要件該当性を検討すべきなのか、話のスジを理解する鍵はそこにあります。

 

 

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2007/04/03

うさぎは舌打ちをしてお金を返すだろう

NOVAの精算規定無効=中途解約めぐる訴訟-最高裁初判断(Yahoo)
「英会話学校大手NOVA(ノヴァ、大阪市)を中途解約した男性が未受講分約31万円の返還を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は3日、契約時より高い単価で受講済みの分を計算するノヴァの精算規定を無効とし、ノヴァ側の上告を棄却した。」

特定商取法の49条2項1号のイをごらんください。

特定商取引に関する法律

第49条(中途解約権)

「2 役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。

1.当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合
次の額を合算した額

イ 提供された特定継続的役務の対価に相当する額」 

特定商取引に関する法律とは、もともと訪問販売法という名称の法律でした。

それはかつて訪問販売,通信販売,連鎖販売取引、いわゆるマルチ商法を規制対象として,これらの販売形態における一定のルールを定めることにより,消費者被害の防止を図ることを目的として昭和51年に制定された法律でした。

しかしその後、サービス取引の多様化に伴い、エステティックサロン、外国語会話教室、学習塾、家庭教師派遣等の継続的役務取引において、解約を巡るトラブルが多発するという事態が目立つようになってきました。

これら取引はたいてい長期多数回のコース契約を締結します。

しかし実際にサービスを受けてみると広告や勧誘時における説明の際に受けたイメージと異なり、当初期待した成果が得られないことも少なくありません。

しかしいざ中途解約をしようとすると、業者が中途解約制限特約、多額の違約金特約などの適用を主張し、紛争が生じるという例が多発したのです。

そこで改正により新たな規制対象として、「特定継続的役務提供」の章が設けられ、政令により、エステティックサロン、外国語会話教室、学習塾、家庭教師派遣の4業種が規制対象として指定されました。

そして特定商取法による規制の一つとして、クーリングオフ期間経過後に利用者側が中途解約をした場合の違約金等の上限規制があります。

それは違約金に上限を抑えることにより、利用者側が違約金等の請求を恐れて中途解約権の行使をためらうことがないようにして、中途解約権を実質的にも行使可能なものにした規制です。

したがって約款などで定められた解約精算に関する特約は、内容が合理的か、またその内容が利用者側の中途解約権の行使を必要以上に制限しないかといった実質的な観点で判断しなければなりません。

そしてもしこれに反する特約はその効力を否定すべきです。

でなければ、特定商取法が用意した解約精算上限規制は、無意味な条文になってしまいます。

ただし一方で49条の2項1号イは、上限規制中で事業者側から請求できる金額として、「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を掲げています。

しかしそれは事業者側からみた真っ当な請求額を確認的に記載したものにすぎませんので、解約時には特殊な単価計算をなして「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」として前払い授業料から控除しようとすることは、事実上の上限規制の潜脱になってしまいます。(参照:平成17年2月16日 東京地裁 事件番号 平成16(ワ)25621 判決文)

換言すれば、解約時のために約款で用意された特殊な単価は、49条の2項1号イを破壊する砲弾と読み得るのです。

受けてみなければ中身が分からない長期のサービスを提供するビジネスの経営は、ひとえに「契約した人の中からどうやって大量の中途解約権を行使しようとする人を引き留めるか」に力点がかかっているといえます。

そしてそれは本来、「対価を支払った人に期待以上のサービスを提供していくこと」によってなされなければならない仕事なのです。

 

 

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2007/02/27

密漁者は血で飯を食う

ヘリ不正輸出のヤマハ発、中国から高額「授業料」得る(読売新聞)
「調べによると、中国側からの送金は、1機当たり約1575万円の無人ヘリの代金とは別で、取引が始まった2001年ごろからあったという。送金の趣旨について、ヤマハ発側は「現地で無人ヘリ操縦を教えた授業料」と説明した。一方、国内で系列会社の代理店が開催する無人ヘリ操縦技術の受講料は1人当たり50万円前後という。また、スカイ事業部主査の板垣孝文容疑者(57)(同)が技術指導のため数回、中国に渡航していたことも判明しており、捜査本部は、渡航の目的についても詳しい説明を求めているとみられる。」

外為法の第48条をご覧下さい。

外国為替及び外国貿易法

第48条(輸出の許可等)

「1 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。」 

外為法48条は”特定の種類の貨物”が”特定の地域”へ輸出されることで生まれる世界の危機を防ぐため、その輸出を許可制とし、あらかじめ火種を押さえようという条文です。

そこでいう”特定の種類の貨物”及び”特定の地域”は、「輸出貿易管理令」に詳しく規定されています。

そこではたとえば、武器や武器関連製造設備、原子力関係が全地域に向け許可要、毒ガス用科学原料がイラン・イラクに向け許可要、コンピュータや全駆車が南アフリカに向け許可要、それ以外のココム関連がアフガニスタンなどの地域へ許可要とされています。

平和主義を憲法に採択するわたしたちの国の輸出によって、国際紛争が助長されるような事態があれば、わたしたちの憲法はただのカモフラージュに成り下がります。

そこでMETIはこれを避けるため、武器輸出三原則に基づきこれらの国々への特定物資輸出を厳格に監視しているのです。

(よって今回のヤマハもそもそもMETIによって告発がなされています)

もともと武器輸出三原則にいう武器とは、軍隊が使用するものであり、直接戦闘の用に供されるものだけをいいました。

しかし外為法48条が血で飯を食う行為をより実質的に監視しようとするならば、許可対象は、転用可能なものも含めて武器輸出三原則にいう武器よりも広く定義しなければならず、実際そうなっています。

たとえば産業用ダイナマイトなどは武器三原則にいう武器にはあたりませんが、輸出貿易管理令はこれを輸出に許可を要する対象としているのです。

ヤマハが軍事転用可能なラジコンヘリを、報告数値を書き換えてまで輸出したことは外為法48条に違反しています。

そこはこっそりと大量の魚を捕獲できる、限られた人しか知らない穴場の漁場だったかもしれません。

しかしその捕獲した魚は、平和憲法の腹を食いちぎる獰猛な種であることもまた、たいていの漁夫は理解しようとしないのです。

 

 

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2007/02/23

プールの名は不条理

欠陥住宅補償、売り主に保険加入義務・09年度メド (日経新聞)
「国土交通省は耐震強度偽装の再発防止策の一環として、欠陥住宅の被害を補償する新制度をまとめた。2009年度半ばをめどに、一戸建てやマンションなどすべての新築住宅の売り主に「欠陥住宅保険」への加入か、補償に充てる資金の供託を義務付ける。売り主が経営破綻しても欠陥住宅の補償を確実に受けられる仕組みを整え、被害者が保険金や供託金で補修や建て替えをできるようにする。国交省は新制度を盛り込んだ「特定住宅瑕疵(かし)担保責任履行確保法案」を3月6日にも閣議決定し、今国会に提出する。」

民法の570条をごらんください。

第570条〔瑕疵担保責任〕

「売買の目的物に隠れたる瑕疵ありたるときは第566条〔担保責任〕の規定を準用す

但強制競売の場合は此限に在らず」 

瑕疵担保責任とは、売買の目的物に隠れた欠陥がある場合に、売主が買主に対して負う担保責任のことです。

担保責任とは、給付されたものに瑕疵がある場合に、給付した人が相手方に負う責任のことで、払うお金と給付される物の対等性を保証して当事者間の公平を図ろうとするシステムです。

ここで隠れた瑕疵というのは、普通の人が発見できないような欠陥で、普通そういった物がもつ性質を欠くことをいいます。

つまり瑕疵担保責任は、見つけにくいキズを飼い主が初めて見つけたとき、それを知ってから一年以内なら売り主に損害賠償を請求できるようにして、深い部分まで徹底して当事者同士の公平を図ろうとしています。

新築住宅の場合、品確法95条で10年間の瑕疵担保責任を追及できるようにはなってはいますが、施工業者が倒産していれば追求のしようがありません。

しかも元1級建築士の姉歯秀次被告の行ったケースのような故意や重過失による欠陥住宅の場合は、イレギュラーだとして保険会社は保険金を支払ってくれません。

このため新法案は、そうした保険金給付の対象外となったケースを救済するため、建設業者による供託、宅地建物取引業者による供託、新規住宅瑕疵担保責任保険法人の指定などを行い、公平の理念を新築住宅の世界にも行き渡らせようとしています。

そもそも設計者がひどい人であるケースほど救いが受けられないという業界構造では、たしかに供給物と対価のバランス設計が最初から崩れているといえます。

そして下請け、孫請け、曾孫受けを組み込むことで生み出されてきたその不均衡は、業界上部に不条理な利益をプールさせてきたはずです。

特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案はそのプールを一部決壊させ、あるべき均衡を取り戻そうとしているように見えます。(私見)

 

 

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2007/02/16

継続役務:兎はあらかじめ笑う

英会話のNOVAに立ち入り検査 解約トラブルで経産省(朝日新聞)
「さらに、同社の解約に関する事項の説明が、特商法が禁じる「不実の告知」に当たる疑いも浮上している。 NOVAは新規の受講者を勧誘する際、まず住所、氏名などを登録。数日後に受講コースを振り分けるレベルチェックをし、契約内容を決めて正式な申し込みを受ける。 特商法は契約後、一定期間内なら無条件で解約できる「クーリングオフ」の制度を定めているが、受講者が解約を申し出ても、最初に氏名などを登録した日を「契約の起算日」などと主張。受講者とトラブルになる例があるという。」

特定商取引法の第44条1項6号をご覧下さい。

特定商取引に関する法律

第44条(禁止行為)

「役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約の締結について勧誘をするに際し、又は特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。

6 当該特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項」 

特定商取引に関する法律とは、消費者トラブルを生じやすい特定の取引を対象にして、そのトラブル防止のルールを定め、不公正なビジネススタイルを取り締まろうとする法律です。

その旧称を、訪問販売等に関する法律といいました。

語学教室やエステティックサロン、結婚相手紹介サービスなどは特定継続的役務提供と呼ばれこの法律の管理下に置かれることになっています。

そもそもそれらの業態に対して特定商取引法が目を光らせる理由は、身体がやせることや、英語が話せるようになることなどの実現は、必ずしも確実ではなく、逆にそこをレバレッジにして利益を生む構造を設計できるビジネスだからです。(私見)

それら不確実な夢にたいして継続的に課金するビジネスでは、お金を払う側にとってみれば、いったい自分がどこで支払った分に応ずる対価を得たのかが確認しがたく、場合によっては結果が得られないのは中途挫折した自分が悪いのだと責めるはめになりがちです。
 
そこでこうした業態に対して、法はその44条で契約の締結について勧誘を行う際、または契約の解除を妨げるために、事実と違うことを告げること、契約の締結について勧誘を行う際、または契約の解除を妨げるために、故意に事実を告げないこと、さらに契約の締結について勧誘を行う際、または契約の解除を妨げるために、威迫して困惑させることなどを禁止しています。

それらに違反した事業者は、業務停止命令(47条)などの行政処分や罰則の対象となります。

立ち入り検査を受けた英会話学校が業界最大手であることの意味は、潜在的にそれら継続的役務提供ビジネス全般が、そもそも相当数の脱落者予定を利益構造に組み込んで運営されていることを予告しています。

習いに行くというそのこと自体が、あらかじめ自分に不利益な暗示をかけてはいないか、わたしたちにはコマーシャルを消して時々そのあたりを考える時間が必要です。

 

 

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2007/02/15

手話:トランス・エフェクト

女社長ら3人逮捕/手話で聴覚障害者から詐欺 (佐賀新聞)
「小林容疑者らは2000年夏から05年6月にかけて、「高金利を支払う」「聴覚障害者向けの施設を造る」などと言って約270人から約27億円を集めていた。親族に聴覚障害者がいることから手話が得意で、各地の障害者のサークルを通じて出資を勧誘し、被害は18都県に及ぶという。ほかに逮捕されたのは、元社員の町田栄子容疑者(56)と長男の訓清容疑者(28)=いずれも神奈川県湯河原町。小林容疑者は「詐欺と言われても仕方がない」と容疑を大筋で認めているが、町田容疑者らは「結果的にこうなった」と犯意を否認している。」

刑法の246条1項をご覧下さい。

第246条〔詐欺〕

「1 人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。」 

人の心が眼や耳から情報を取り入れると、無意識下でその膨大な情報を取捨選択、加工をほどこして、自分だけの世界観を自分の中に再投影します。

その無意識下における情報処理方法は、各人が微妙に異なるため、私たちは一人一人異なった幻を見ながら、同じ世界に参加しているつもりでいます。

このときもし、自分の世界観生成方法そっくりの人が隣に現れると、私たちには一気にその心理的な距離を縮める傾向があります。

たとえそれが策略だったとしても、そうしたチューニング行為があれば、それは私たちの無意識に対して「彼は私に似ている。共通項がたくさんある。彼はわたしと同じ苦しみを感じている。警戒を解いてかまわないのだ」というメッセージを送り込むのです。

精神科医、ミルトン・エリクソンはかつて精神病院で5年間一言も口をきかなかった患者を見た際、患者の呼吸のリズムと自身の呼吸のリズムを同調させつづけただけで、最終的に彼の口を開かせることに成功したというエピソードを残しています。

そして数多の悪徳商法が、そのトランス・エフェクトをグレーゾーンでマーケティング・システムとして取り入れ、「彼は自由意思で契約したのだ」と言い逃れ、社会は被害者をそしるのです。

耳が良く聞こえない方々は、情報の選択経路を大きく手話に依存することになります。

目の前で彩られる指の動きの組み合わせは、もはや絶対的に依拠するところです。

もし入力経路が限られた人にむけて、そこにマーケティング・システムを設計する人がいたならば、ターゲットにされた人は自分でも驚いてしまうほどすぐに警戒感を解いてしまい、進んでその意志決定の主導権を相手に渡してしまうかもしれません。

つまりそこには、真っ当なビジネスマンであると名乗るうちは、自ら一線を引くべき領域があるのです。

女は慣れ親しんだ手話を用いて、大金を聴覚障害をもつ方々から巻き上げました。

行為を自分の中でも正当化するため、彼女は詐欺の故意を意識の中で薄めていたかもしれませんし、ひょっとすると当初は悪意がなかったのかもしれません。

しかし刑法が用意した詐欺の構成要件が、あざむくこと、すなわちその約束は果たされないことを知りながら、被害者に財物を交付させた事で足りる以上、彼女の手話を使ったマーケティングはもはやビジネスだったとは呼ぶことが許されないのです。

 

 

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2007/02/08

弱者:パズルの解法

ウォルマート、性差別で米史上最大の集団訴訟へ (産経新聞)
「1998年以降、同社に勤務したことのある女性従業員約150万人が訴訟に参加できることになり、性差別裁判で米史上最大の集団訴訟となる見通しだ。原告は、昇進の機会が奪われたうえ、性的嫌がらせも受けたと訴えている。ウォルマート側は「3400の店舗は個別に運営されているうえ、女性差別の規定もない」と主張している。」

民事訴訟法の第207条をご覧ください。

207条(当事者本人の尋問)

「裁判所は,申立てにより又は職権で,当事者本人を尋問することができる。この場合においては,その当事者に宣誓をさせることができる。」 

集団訴訟とは、一定の共通の利害関係をもつ人達が、その利益のためにいっしょに提起された訴訟のことです。

集団訴訟は個人では太刀打ちできないような、巨大企業や国家行政が相手の訴訟で威力を発揮します。

しかし問題がないでもありません。

不法行為法は元来、公平、妥当かつ合理的な損害の賠償をその趣旨としているからです。

すなわち、一人ひとり受けた被害の程度、心理的状況などは異なるわけで、裁判所がそれを細かに調べるためにはそれぞれを尋問しなければならないのが原則となります。

もともとわたしたちの民事訴訟法は、裁判所が当事者本人に尋問できることを規定しています。

しかし原告がたとえば150万人もいれば、全員の当事者尋問など現実的ではありません。

そのかわりに考えられる手段が、原告全員の一律賠償請求です。

かつて昭和56年12月16日、最高裁が大阪国際空港の騒音訴訟において、302名の集団訴訟に対し、原告全員の一律賠償請求を認めました。

もっともそれは不法行為法の原理を変形する処置ですので、一定程度の線引きはなされています。

つまり大阪国際空港事件の場合、「各被害者は全員が被っている最低限の共通被害だけの賠償を求めたにすぎないので」という限定付きで、一律賠償請求を成立させているのです。

加えて大阪国際空港事件では、被害の個別的具体的な立証も不要とされ、裁判所も各人別に異なった被害の認定をしなくてもよいと判断しました。

これは302人全員へ個別的具体的立証を要求することで、一律包括請求方式による効果的な集団的利益の保護が台無しになってしまうことを避けたものです。

(以上参照:判例百選 民事訴訟法 有斐閣

アメリカで史上最大の集団訴訟にも、150万人という尋常でない数の原告数から考えて、同じような法理が段階的に用いられるのではないかと思われます。

質素を好んだ伝説的な創業者の死後、この世界最大の小売業者の周りからはいろいろな毀誉褒貶が絶えず聞こえてきます。

極限までコストを抑えること、それは利益追求という企業に与えられた第一の命題に直結するパズルであり、その解法は時に国内の労働組合や、国外の工場労働者へのプレッシャーだったりする局面もあるのかもしれません。

そしてそれが芸術的にまでギリギリのラインの解法であれば、同業者や経済学者からは羨望を集めるでしょう。

しかしもし、そこに非情なまでにアンフェアな構造が見つかるならば、それは巨船の船底に水を噴かせる穴となる可能性をもまた含んでいます。

 

 

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2007/01/13

倫理は痺れてどうでもよくなった

不二家:問題隠ぺいの形跡?「雪印の二の舞い」と内部文書(毎日新聞)

「シュークリームに消費期限切れの牛乳を使用していた問題で11日、会見した菓子メーカー大手、不二家の藤井林太郎社長は、食品衛生法の規定の10倍、社内基準の100倍の細菌が検出された洋菓子「シューロール」を出荷していたことを明らかにした。同社は「発覚すれば(解体的出直しを迫られた)雪印乳業の二の舞いは避けられない」との内部文書を作成しており、問題を隠し続けようとした形跡もある。不二家によると、昨年6月8日に埼玉工場(埼玉県新座市)で製造したシューロールで、基準を超える細菌が検出されたが、そのまま113本を出荷した。消費期限を社内基準より1日長くしたプリンの出荷も判明した。また、同工場では04年に1カ月で50匹のネズミを捕獲、06年夏以降も2匹捕獲しており、衛生上も問題があった。一方、内部文書は社内の調査チームが作った報告書に添付されていた。」

会社法の355条をご覧ください。

第355条(忠実義務)

「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」 

よくいわれるコンプライアンスとは、”従う”という意味であり、企業の利益追求はあくまで法令や社会の倫理の範囲内におさめるべきだという時代の要求を意味しています。

会社法の355条も、取締役に法令や定款、株主総会の決議の遵守を”社会のために”要求しています。

自社の不祥事の情報を積極開示することは、所属する従業員達にとって自社の未来を、すなわち自分たちの未来を薄暗くさせるように感じさせるかもしれません。

このため従来は内部にいる全員の利害が一致して、企業にとって不利益な情報は隠蔽される方向になりがちでした。

しかしこれまでにも不祥事をもみ消そうとする企業の態度により、社会的な信用が失われ、結果的に事業の継続に決定的なダメージをもたらした事例が生まれています。

その意味で情報の隠蔽という判断は、終局的に社員やその奥さんや子供達に益をもたらすものではありません。

まして食品は消費者の口に直接入る商品であり、衛生管理のずさんは生命の危機さえ起こし得ます。

ただしどのような業種であっても、ことの重大さを理解する良心は、やがて企業の利益追求運動のなかで徐々に麻痺していってしまうのかもしれません。

そもそも株式会社は取締役に業務を委任しているような関係にあります(会社法の330条)。

つまり取締役は、受任者的な立場としてその業務に善管注意義務を負っていることになります。

しかし取締役とは迅速な決断が要求されるポストであり、結果責任ばかりを問う法設計にしてしまえば、取締役達はいきおい常に消極判断しかできないことにもなりかねません。

そこで取締役に注意義務違反の責任を問う場合、その証明責任は追及側にあって取締役達にはなく、取締役に責任追及がなされるのはもっぱら他の取締役や使用人に対する監督義務違反に集中することになります。

裏を返せばどこかの企業が情報を隠蔽する体質だったことが判明したら、それはとりもなおさず、取締役達がその体質を長年放置したのか、あるいはその体質になるまで指導を塗り続けたのだと判断されることになります。

株式会社法から解釈すると、コンプライアンスの不徹底が企業にもたらす不利益を真に理解すべきなのは、取締役達であるといえるのです。

2002年1月、隠蔽に隠蔽を重ねた三菱自動車工業はトレーラーのタイヤを脱落させ、親子三人を死傷させました。

同じころ牛肉偽装が発覚した雪印食品は、解散に追い込まれました。

いつの時代も企業が社会を発展させたことと表裏のように、その不祥事は発生してきましたし、きっとこれからも発生します。

しかしもし万が一自社の内部で社会に迷惑がかかる不祥事が発生した場合に、これからの時代は企業を存続させていくためにも、新しい情報開示フォーマットを要求しています。

 

 

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2006/09/24

あなたが自ら望んだのだと、巨人は契約書を指さした

【コンビニ店長たちの反乱】(上)1円廃棄 (IZA)
「昨年11月、福島県いわき市の「ファミリーマートいわき久之浜町店」の店長(当時)、斎藤泰慎(やすのり)さん(36)は、緊張した面持ちで店内事務所のパソコンに向かった。画面には仕入れた商品の売価が並ぶ。斎藤さんは十数分後に「販売期限」が迫り、廃棄処分寸前となった弁当やおにぎりなど約20品目を選んでキーボードを操作した。売価を「1円」や「5円」に書き換えていったのだ。斎藤さんはすぐにそれらの商品をかき集め、すべて売価で購入した。そして、その日を境に斎藤さんは来る日も来る日も、この操作を繰り返したという。俗に「1円廃棄」と呼ばれるこの手法。数年前、コンビニ会計への痛烈な反対の意思表示として、別の大手チェーンで複数のオーナーが始めた方法だ。極端な値引きにみえる。だが、公正取引委員会は「お客さんに売っているわけではない。周辺地域の店との公正な競争を阻害しないので、独占禁止法上の不当廉売にはあたらない」との見解を示している。」

民法の第90条をご覧下さい。

第90条〔公序良俗違反〕

「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とす」 

商売人とは粗利を出すことを仕事にしている人たちを指します。

ふつう粗利とは、総売上げ額から仕入れ値や破棄した食品など必要経費を差し引いて算出するものです。

これを仮に粗利の一般解釈と呼んでおきます。

対してコンビニの本部と加盟店の間では、この粗利の解釈方法が異なり、売上げ総額から仕入れ値を差し引く際、破棄した食品等を経費として差し引くことを許しません。

これを仮に粗利に関するコンビニ解釈とよびましょう。

つまりコンビニ解釈においては、破棄分は最初から仕入れなかったものとして計算することになります。

その粗利にパーセンテージをかけてロイヤリティを徴収するコンビニ本部にとって、総売上額を破棄食品分が圧縮しなくなるためこれが多くなるほど損をしないことになります。

逆に言えば、破棄食品等はコンビニ・フランチャイズに退職金をつぎ込んで参加した加盟店オーナーがかぶる仕組みと言い換えることも可能です。

そこで現在一部加盟店のオーナー達が破棄食品分などを「一円で売り上げた」こととして(自ら買い上げ)、廃棄予定だった食品の分の仕入れ原価もちゃんと総売上額から差し引くことで、粗利を不当に拡大解釈させないようにする手法が一円破棄と呼ばれる手法です。

コンビニのフランチャイズ契約に関して訴訟が頻発している現象の根底には、「人は不利な契約をいったん自己意思の下で締結してしまうと、はたしてどのような契約でも永劫拘束されるべきなのか」という課題が横たわっています。

法律の形式解釈上その答えはイエスであり、そのことを契約自由の原則と呼びます。

それは契約するも自由、しないも自由、よっていったん契約したからには、自らの意思によって拘束されなければならないという法哲学で、これにより社会の自治を国家にいちいち管理させない世界を維持しています。

契約自由の原則は条文上直接の規定はありませんが、「公序良俗に違反しない限り、成立した契約は無効にならない」と裏読みすることができる、民法の第90条等が根拠規定となりえるといわれています。

ただしその世界観は、より巧妙な契約書を用意した巨大企業と契約を締結した非力な一個人から、契約の不合理を訴える道を奪うことも意味しています。

実際法の形式解釈による矛盾で苦しむ人たちを救済するために、国家は雇用者という強者と労働者という弱者の間に各種労働法を、賃貸人という強者と賃借人という弱者のあいだに借地借家法などを介在させ、各場面でいびつな未来を回避しようとしています。

問題の核心は、膨大なページ数の契約書を用いる契約という行為が、現代社会では必ずしも完全な自由意思と完全な理解に基づいてなされているとはいえないというところにあります。

加えてコンビニエンスストアなどのフランチャイズ契約では、契約書を加盟店が所持できず社外秘として本部だけが所持するのだといいます。

もし90条、契約自由の原則が当初思い浮かべたような幸福をつくりえない場面があるのなら、原則を修正しようとする態度が必要なはずです。

そしてこのような態度こそ、「法文の文言にとらわれず立法趣旨から考える」という法の全文が期待するところだといえます。

「契約の絶対」は少なくない場面で、幸福を強者に偏在させるためのハイウェイとして機能しています。

やがて数々の訴訟の果てに、強者フランチャイザーと弱者フランチャイジーの間へ国家が特別法を用意し、ロスチャージ問題を解決する日がくるやもしれません。

その日まで民法90条は、「第四章 法律行為」の突端で、法文を読む全ての人に解釈の振幅をはためかせています。


 
 

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2006/07/23

ファミリービジネスの玄関に呼び鈴はない

パロマ事故、安全装置の在庫が不足(朝日新聞)
「パロマ工業製のガス湯沸かし器による一酸化炭素(CO)中毒事故で、北海道エルピーガス協会が96年、前年に北海道恵庭市で起きた事故の背景として不完全燃焼を防ぐ安全装置の在庫不足を指摘していたことが分かった。同社は事故が多発する中、部品製造を打ち切っていた。昨年11月に東京都港区で起きた事故を捜査している警視庁は、安全装置の在庫不足が不正改造を誘発した可能性もあるとみて、関係者の事情聴取を進めている。」

法人税法の第2条10号をご覧ください。

第2条 

「この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

10.同族会社

会社の株主等の3人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。」 

少数の株主等によって、過半数の株式等が支配されている会社を法人税法上、同族会社と呼びます。

同族会社では、株主に対する高い所得税率の適用を回避するために利益を内部に留保する場合が多く見られます。

また容易かつ合法的に株主や社員、関係者の租税負担の軽減を図ることさえ可能です(多くの場合、それを目的に法人成りは利用されています)。

そこで法人税法は同族会社に対して非同族会社よりも厳しい審査基準を設けています。

しかし同族会社にまつわる本質的問題点は、法人税法が睨みを効かせる税収の場面だけに収まりません。

たとえば取締役を選任する株主総会でも、現実には総会を開かず議事録のみを作成し登記をすませる同族会社は、現実には日本中にたくさん存在しています。

またはそれほど極端でなくとも総会の召集手続や決議方法が商法の要求するところに合致しておらず、したがって本来無効の総会決議を行っている場合も珍しくありません。

商法の定める手続を守らない決議でも関係者一同がこれに異存なく従うなら、表面上有効なものとして維持されているというのが今日も日本中で行われている現実です。

(参照:同族会社のトラブルと対策 堀越董 税務研究会出版局)

さて、パロマという会社の社史によれば、創業者小林由三郎氏が小林製作所を創業、まもなく2代目小林進一氏がこれを継承。

続いてそれを母体にして、製造部門の「パロマ工業株式会社」、販売部門の「株式会社パロマ」が独立分離、それぞれ家族である小林敏宏氏と小林弘明氏が社長に収まっています。

法人税法上の定義はともかく、人事を見る限り家族で一大企業グループを形成していることに間違いないようです。

製造部門であるパロマ工業の社長が辞め、販売部門であるパロマの社長は辞めないという会見がありましたが、グループを家族の手からは離さないという意思表明ととれないこともありません。

設計上に問題があった湯沸かし器が、20年間で殺してきたユーザの数はわかっているだけで21人。

家族商売に公の風(安全の基準)を通す、つまり責任を認めさせるには、業過致死という公法の出動を待たなければならなかったようです。

日本の株式会社の大多数を占めるといわれる同族会社の是非はともかく、ファミリービジネスの玄関は悲惨な事件が頻発するまで誰もノックできないというのが、わたしやあなたが肯定している世界の現実でもあるようです。




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2006/06/18

100億円が今夜もオレンジ色に輝く

東京タワー、借金100億円のカタ 元社長が事業に失敗(朝日新聞)
「残った債務は123億円。日本電波塔は99年12月に福三郎氏を社長から解任。00年、東京タワーの敷地と建物を担保に銀行から100億円を借り入れ、自己資金の23億円を加えて全額肩代わりした。登記簿には今も100億円を限度額とする根抵当権が設定されているが、同社によると、すでに53億円は返済したという。」

民法の398条の2をご覧下さい。

第398条の2〔根抵当権の意義と被担保債権〕

「1 抵当権は設定行為を以て定むる所に依り一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度に於て担保する為めにも之を設定することを得(以下略)」 

日本がまだ田んぼとあぜ道だらけだった時代、街にビルを建てるためや農家が新しい田畑を購入するため土地の上に抵当権が設定されてきました。

抵当権は初期において、もっぱら静的ににお金を作るために用いられたのです。

しかし経済が発達しはじめるとあらゆる企業が動的に(常時)大量の資金を必要とするようになり、そのことはわずかなお金を増やそうとしている人にとっても”それは大きなビジネスチャンスである”と解釈されるようになりました。

すると抵当権という方法論は、大量の投資を仲介する役割を負いはじめました。

つまり抵当権というものは歴史上、所有権者が金銭借入するための制度という意味づけから、徐々に資本家の金銭投資のための制度という意味づけに重心を移してきたというわけです。

そしてその新しい目的下においては、抵当権にとって投資者の権利が容易に譲渡し得るものであることは最大課題になりました。

しかも、その流通性を確保するためには、原初、借入側に軸足を置いていた時代とは、構成を変えたシステムにしなければならないことになります。

抵当権変質の歴史は、「流通性」導入の歴史であったとも言い換えられ、そしてその導入した流通性こそが抵当権そのものを大幅に進歩させたといえます。

抵当権に高度の流通性を要求した経済の発達は、結果的に不動産を債権化することに拍車をかけてきたのです。(参照:近代法における債権の優越的地位 我妻栄)

さて、民法の398条の2が定める根抵当とは、限度額を定めておいて、将来確定する債権をその範囲内で担保する、抵当の巨大などんぶりのことです。

あの都心の夜をオレンジに飾る東京タワーも、現在100億円の根抵当が設定されているのだとか。

高度に発達した抵当権制度は、東京タワーにお金を貸している人に確実な換価性を保証しています。

通りがかる人にはただ優美な姿だけを見せていますが、ことビジネスマン達に対しては、一枚の大きな紙幣としての姿を見せているということも、また高度経済社会の真実です。




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2006/06/09

そして法律は暖簾になった

内側扉が開いたままエレベーター上昇 八王子のホール
「東京都八王子市の市芸術文化会館いちょうホール(同市本町)で今年4月、「シンドラーエレベータ」社製エレベーターの内側の扉が20~30センチ開いたまま上昇、外側の扉が開かないため乗っていた3人が一時閉じこめられていたことが、9日分かった。このエレベーターでは、04年4月以降「中に人が閉じこめられた」「待っていてもドアが開かない」などのトラブルが計5件起きていた。いずれもけが人などはいなかったという。 」

建築基準法施行令の第129条の9をご覧下さい。

第129条の9

「エレベーターには、次の各号に掲げる安全装置を設けなければならない。

1 かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じていなければ、かごを昇降させることができない装置。(以下省略)」 

エレベータは扉が閉まらないと動き出さない、これは少なくともわたしやあなたの国では必須の前提事項として建築基準法施行令が要求しています。

エレベータやエスカレータなど公共の場所にあるエレベータが施設によって安全性の信頼度に隔たりがある社会だとすれば、昇降する箱に乗る行為は一種のギャンブル、それもローリスク・ハイリターンなギャンブルになってしまいます。

そのため施行令の129条の9は、扉が閉まらなければ昇降できないこと、籠が来ていないときに勝手に扉が開かないこと、操作していなければ籠は勝手に移動しないこと、いざとなったら動力を切れること、妙に高速になったら動力が自動的に切れること、万が一落っこちたときは衝撃を緩和できること、閉じこめられたら連絡できる装置があること、などがカゴに当然に備わっていることを私たちとメーカの間で保証していたはずでした。

エレベータなしではもはや生活が成り立たない現代の暮らしにおいて、ロープで数トンの加重を高層階まで一気につり上げるリフトの安全度をわたしやあなたが把握するには、唯一法でメーカーをコントロールするより手立ては現実にはありません。

そして純益やシェア戦争の前にどこかのメーカーが建築基準法施行令を見下した生産体制をとっていたとしたならば、保証書としての建築基準法施行令はただの飾り物でしかありえなくなります。

そしてもしそのときは、日本エレベータ協会のホームページでいかにリフトの安全性を強調しようとも、全てが空虚に響くだけです。

(ちなみに日本エレベータ協会のホームページ上では”建築基準法129条の9で定められている”とありますが、正しくは建築基準法施行令129条の9が正解です。)

起こるはずのない手抜き設計がマンションで頻発したあとは、起こしてはいけない事故がエレベータで起こりつづけていることが明らかになりつつあります。

エレベータ市場というお店には、販売純益はもとより、長期間の高額なメンテナンス契約というとてもおいしそうな料理や飲み物が並んでいます。

そこでは施行令は、もはや暖簾のように”そこには確かにあるけれど、さっさと手ではらってくぐり抜けるだけ”という、気にもとめられることがない地位に成り下がってしまっていたのがどうやら一面の現実であるようです。

たとえ”エレベーターでは世界第2位”(シンドラーエレベータ株式会社ホームページより)と自ら名乗る法人であろうとも、そののれんがどういった意義でこの国では編まれているのかを、行政が厳罰をもって再確認させるシステムがわたしたちの国にはうかつにも欠けていたようです。

未来がまだ始まる前に失われてしまった若い命がそれを教えてくれています。




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2006/05/23

NTTが手をかざすと、固定資産は流動資産になった

固定電話加入料「値下げで損失」 賠償求め集団提訴へ(朝日新聞)
「前波亨哉(たかや)代表(64)は「NTT自身もパンフレットで『電話加入権は大切な財産』と宣伝していた。財産価値を減らすのなら減額分を補償すべきだ」と訴える。 一方、NTTは「毎月の基本料を割安な水準に設定するため、基本料の一部を前払いしてもらって回線設備に投資する実費。加入権の財産的価値を保証する権利金ではない」と説明する。」

法人税法の2条22号をご覧下さい。

第2条(定