2007/07/19

CHINA FREE:一方の呪具

米社、「チャイナフリー」表示へ 中国産への不信受け(CNN)
「中国産食品や製品に対する不信感が世界的に増大するなか、米食品会社、フード・フォー・ヘルス・インターナショナル(本社・ユタ州オレム)はこのほど、商品に中国産の原材料が入っていないことを示す「チャイナフリー」のシールを導入すると発表した。同社は、自然食品や栄養補助食品(サプリメント)、ペット用食品などを扱っている。「わが社の商品は、有機農産物を米国内で加工、包装している。化学薬品は加えていない」と、同社幹部は強調する。チャイナフリーのシールを付けることで、さらに安全性を印象付けるのが狙いだ。 フランク・デービス社長はロイター通信とのインタビューで、「中国産食品の問題が盛んに報じられ、消費者も不安を募らせているはずだ」と話した。チャイナフリーの表示は、同社の広告や販売促進キャンペーンにも使われるという。米国では今春、中国産原料を使ったペットフードで多数の犬やネコが死ぬ騒ぎがあり、その後も練り歯磨き剤や魚介類などへの有毒物質の混入が相次いで明るみに出ている。 」

GATTの9条をごらんください。

関税及び貿易に関する一般協定

第9条

「1 各締約国は、他の締約国の領域の産品の表示の要件に関し、第三国の同種の産品に許与する待遇より不利でない待遇を許与しなければならない。(以下略)」 

関税及び貿易に関する一般協定、いわゆるガットとは、英名 General Agreement on Tariffs and Trade の略称です。

それは、貿易の公平を図ろうとする協定のことです。

その9条、原産国表示規定は他国の商品が不当に冷遇されないよう協力しようとする協定です。

今回のニュースのように、他国の原産品の不良性という見聞から自国の商品を守るため、成分不混入という逆アピールを9条は想定していません。

むしろ米国の企業が CHINA FREE という表示を用いることは、一国が着せられる汚名として貿易一般協定の立法精神には抗うものとなるでしょう。(私見)

かといって国際協定上、原産地表示に関するルールも、ガット9条以外には見あたらないのです。

今日になって肉まんに段ボールが混入されていたというニュースはねつ造だったというニュースも聞こえてきました。

商人としての国家に不安があるとき、わたしたちにはそうした輸出国自身からの発表と、米国の企業がとったような輸入国自身による手立てという、二つの呪具だけが与えられています。

どちらの呪具が有効なのかは、やがて貿易という市場自身が原産国表示に関する国際協定という形で定めてはっきりするでしょう。

いずれにせよバーバ・ヤガーは、貿易に関して他の呪具を与えてくれてはいないのです。

 

 

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2007/06/01

電子国家と外交特権

「セカンドライフ」にスウェーデンも「大使館」開設 (zakzak)
「スウェーデン政府は30日、欧米で流行しているインターネット上の仮想社会ゲーム「セカンドライフ」に“大使館”を開設した。同国政府によると、同ゲーム内に政府が仮想の大使館を開くのはモルディブに続き世界で2番目。館内では自国の文化、産業を紹介し、美術展などを開催するという。「セカンドライフ」内では同日、開設式典が行われ、ビルト外相の「アバター(分身)」がテープカットを行った。同外相は「スウェーデンは革新的で、未来に対する好奇心の旺盛な国」と述べ、世界で500万人以上が参加する同ゲームでの活動を強化する意向を示した。(共同)」

ウィーン外交関係条約の22条1項をごらんください。

第22条[公館の不可侵]

「1 使節団の公館は、不可侵とする.接受国の官吏は、使節団の長が同意した場含を除くほか、公館に立ち入ることができない。」 

外交使節団の構成員とその公館が接受国において享有する特権、免除のことを外交特権といいます。

ウィーン外交関係条約は、外交特権をはじめ、”国内にある国外”についてたくさんの特権と免除を規定しています。

それは外交関係を規律する、最も基本的な多数国間条約です。

ただし同時に外交特権享有者はその特権と引き替えに、接受国の法令を尊重する義務と接受国の国内問題に介入しない義務があります。

ウィーン外交関係条約は、もともと慣習国際法として形成されていた外交関係に関する諸規則を、成文化したものです。

つまり本来は日本なら日本政府という国家権力が管理するはずの土地に、慣習という”無言の合意”によって仮想的に他国の管理するエリアを出現させるわけです。

しかしたとえば日本と呼ばれる土地も、どれだけ歴史を遡っても日本という名札が付いていたわけではありません。

その証拠に、かつて日本の領土であった土地も政治的理由により現在他国に接収されてしまっているように、時代によって日本と呼ばれる土地は拡大・縮小を続けています。

いわば地上という土くれの上は、人間という生き物の互いの仮想によって県境や国境という杭が打たれているわけです。

それはそもそも仮想的な庭なのですから、そのなかに外交特権という他国の仮想的な柵を設けることは、たやすいことなのかもしれません。

とはいえこれまでの国家間の事情と、たくさんの血と肉が吹き飛んできたことで、国境という仮想的な柵には簡単には揺るぎがたい得心が与えられています。

電磁的な純仮想空間「セカンドライフ」は、、現実通貨による土地の売買もなされていますが、現在までのところそこには飛び散った血と肉がありません。

現実国家との法律的な矛盾を解消し、リンデンラボ社がどこまで参加者に安全な統治を提供できるかは、他国の統治を迎え入れる外交特権のような”特殊な合意”を、各国家が電子国家に向けて用意する日を待つ必要があるかもしれません。

 

 

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2007/05/04

フリーライダー:最強の商人

中国“国営”遊園地の暴挙にアメリカ政府も激怒(livedoornews)
「中国の国営遊園地「北京石景山游楽園」にアメリカ政府が怒っている。国営であるにもかかわらず、「ディズニーランドは遠すぎる」というテーマのもと、キャラクター許可などを一切取らず、スタッフがディズニーキャラクターに扮しているのだ。また園内にはシンデレラ城などのレプリカも置かれている。」

WTO協定の3条1項をごらんください。

第3条(世界貿易機関の任務)

「1 世界貿易機関は、この協定及び多角的貿易協定の実施及び運用を円滑にし並びにこれらの協定の目的を達成するものとし、また、複数国間貿易協定の実施及び運用のための枠組みを提供する。」

正義としての法の効用は、いくつかの顔があります。

井上達夫教授の著書「法という企て」によれば、主なそれは(1)フリー・ライダーの排除、(2)ダブルスタンダードの排除、(3)既得権益と権利の区別作用、(4)集団的エゴイズムの抑制です。

(1)にいうフリー・ライダーとは、何らかの制度が提供する便益は享受しながら、その制度を維持するのに必要な負担は他者に転嫁する人達を指します。

フリー・ライディングは当然に、彼の利得を最大化しますので、もし世界が他者によるフリー・ライディングを抑制できないのなら、自分だけがこれを我慢する理由がありません。

どこかの国の権利がフリー・ライドされない保障をどの国ももっていないとしたら、その国もまたフリー・ライドせざるをえず、それがまたどこかの国が他国の権利にフリー・ライドする口実となり、それがまたわたしたちの国がフリー・ライドする口実となる、という目もくらむような悪循環に陥ります。

最後には現実にフリー・ライディングする国がなくとも、世界中の国家がフリー・ライディングを強制されることになり、ここにいわゆる囚人のジレンマが発生します。

その循環を排除するには、各国の思惑から独立した”枠組み”が必要です。

フリー・ライダーが利益を享受できるのは、言うまでもなく開発コスト、成長コスト、維持コストを他者が負担しているからです。

法の正義の不変主義的要請はこれを排除します。(参照:井上達夫 法という企て 東京大学出版会)

世界貿易機関協定はその3条で正義の枠組みを提供すると宣言しています。

それは枠に乗っからないメンバーが出れば、囚人達は最初からやり直しだという意味です。(私見)

 

 

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2007/04/20

中東自爆テロの母は日本人

『赤軍』菊村容疑者を逮捕 米から帰国直後に
「一九八八年、米国で爆弾を所持したとして逮捕され、服役していた菊村憂容疑者(54)が十九日、成田空港に帰国した。警視庁公安部は同日、米国内で他人名義の免許証を使用した偽造有印公文書行使の容疑で、日本赤軍メンバーとされる同容疑者を逮捕した。これで、日本赤軍のメンバーで国際手配などをされているのは残り七人となった。」

刑法の四条の二をごらんください。

第四条の二(条約による国外犯)

「第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。」 

1960年、共産党から分派した過激派集団「共産主義者同盟」は、さらに過激な路線を目指した「共産主義者同盟赤軍派」を生みました。

赤軍派は1970年、日航機をハイジャック、その際北朝鮮へ9名が亡命します。

続く1971年、赤軍派の重信房子らがパレスチナ解放人民戦線と連隊し、アラブ赤軍を結成します。

このアラブ赤軍が後に改名し、日本赤軍を名乗ります。

彼らは日本人数名でイスラエルのテルアビブ空港においてマシンガンを乱射、手投げ弾を投げ24名が死亡、80名以上の重軽傷者を出し、ジャパニーズ・レッド・アーミーの名を世界へ恐怖とともに轟かせ、自爆して自殺したスタイルは中東のグループにも衝撃を与えました。

一方で日本国内の赤軍派は浅間山荘事件などで弱体化、自滅の道をたどりますが、パレスチナのジャパニーズ・レッド・アーミーはあくまで攻撃的でした。

1973年にはアムステルダム空港で日航機を爆破、74年にはシンガポールのシェル石油タンクを爆破、仲間が逮捕されるとクウェートの日本大使館をパレスチナゲリラが占領、日本政府を屈服させ日航機で全員脱出しています。

1974年フランスのオランダ大使館を占拠、1975年、マレーシアのアメリカ大使館を占拠、1977年日航機をハイジャック。

しかし各地でテロ活動を展開したことにより逮捕者が相次ぎ、徐々にその勢力は衰えていきました。

創立者の重信房子も2000年大阪に潜伏中のところを逮捕されています。(参照:国際テロファイル 松本利秋 かや書房)

日本国刑法の場所的適用範囲に関しては、属地主義、属人主義、保護主義および世界主義の四つの原則がありますが、国際的に活動する破壊活動集団に対しては世界主義による対応が要求されます。

世界主義とは、自国の刑罰法規に反する行為は、いかなる地域で行われたかを問わず自国の刑法を適用することをいいますが、日本国刑法自体は世界主義を採用するまでに至っていません。

しかし大使館員の殺害や在外公館の占拠および人質を取る行為などの国際テロ行為が続発している事態に対処するため、「国際的に保護される者に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約」などが締結されていきました。

刑法4条の2は、そうした条約の要請する範囲で刑法を適用しようとする、包括的な国外犯処罰規定であり、その範囲で刑法の世界主義の顔を見せるものです。[参照:新版 刑法講義総論 大谷実]

やがて世界中の刑法が条約締結を通じて、まるでインターネットのように繋がり、世界を転々とする破壊活動者を追いつめる日がくるかもしれません。

その技術的許容性はともかく、必要性は高まっています。

 

 

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2007/04/19

暴動:減圧装置

韓国系社会に動揺 ロス暴動の悪夢再来防げ 米大学乱射 (産経新聞)
「韓国系社会の不安の背景には、1992年のロサンゼルス暴動で、韓国系社会が標的となった悪夢の記憶がある。ロサンゼルスの黒人団体はいち早く、韓国総領事館などに支援を表明する書簡を送るなど、今回の事件が人種的な緊張に結びつくことがないよう、行動を起こしている。」

刑法の77条をご覧下さい。

第77条

「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。

一  首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。

二  謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は三年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一年以上十年以下の禁錮に処する。

三  付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三年以下の禁錮に処する。 」 

1991年、ロサンゼルス、サウスセントラルのリカーストア、「エンパイアマーケット」で店番をしていた在米韓国人、斗順子(トウスンジャ)さんは、黒人少女がジュースを盗もうとしたため争いになり、体の大きな少女に殴り倒されたといいます。

順子さんは店から出て行こうとする少女の後頭部へ銃弾を発射しました。

少女は死亡。

時おりしもロドニーキングという黒人青年が白人警官の集団暴行を受けた裁判で、警察官の無罪が言い渡された日でもあり、黒人の人達のデモがこの事件を受けてコリアタウンにも向かってきました。

これがいわゆる記事中にある、斗順子事件の幕開けです。

この暴動でLAXは空を覆いつくす黒煙のため一本の滑走路しか使えず、全てのバス・鉄道は運行中止、学校には休校令が出されました。

3日間続いたロサンゼルスの暴動は、死者53名、火災5300ヶ所を引き起こした後、収束しました。

実は黒人の人達の怒りが韓国人街に集中したのは、LAPDが白人地域のガードに人員を集中させたためなのだといいます。(参照:アメリカ・コリアタウン 高賛侑 社会評論社)

かつて東京都の公安条例が、検閲禁止条項に違反して違憲なのではないかが争われた裁判がありましたが、その結論の中で最高裁は、集団行動の特性についてこう述べています。

「この場合に平穏静粛な集団であっても、時に昂奮、激昂の渦中に巻きこまれ、甚だしい場合には一瞬にして暴徒と化し、勢いの赴くところ実力によって法と秩序を躁躍し、集団行動の指揮者はもちろん警察力を以てしても如何ともし得ないような事態に発展する危険が存在すること、群集心理の法則と現実の経験に徴して明らかである。

従って地方公共団体が、純粋な意味における表現といえる出版等についての事前規制である検閲が憲法21条2項によって禁止されているにかかわらず、

集団行動による表現の自由に関するかぎり、いわゆる『公安条例』を以て、地方的情況その他諸般の事情を十分考慮に入れ、不測の事態に備え、法と秩序を維持するに必要かつ最小限度の措置を事前に講ずることは、けだし止むを得ない」。(最高裁昭和35年7月20日大法廷判決)

随分、群衆は理由なく見下されているようです。

たしかにギュスターヴ ル・ボンもかつて著書「群衆心理」のなかで、群衆とは「第一に衝動的で、動揺しやすく、昂奮しやすく、第二に暗示を受けやすく、物事を軽々しく信じ、第三に感情が誇張的で、単純であり、第四に偏狭さと横暴さと保守的傾向があり、さらに第五にその徳性は暗示に応じてはるかに低下することも、はるかに向上することもある」といっています。

我が国の刑法77条も群衆の暴動を各論の先頭に置き、もっとも警戒すべき罪として重罪を用意しています。(かつてもっとも先頭にあった皇室に対する罪は削除されています)

その保護法益は、日本国家の存立にかかっており、うかうかと騒乱に乗っかってしまうのは憲法の定める統治の基本秩序を脅かしかねないからです。

 

 

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2006/10/16

自警団の会議録を世界秩序と名付けよう

「国連憲章7章」決議、武力行使招いた過去も(朝日新聞)

「北朝鮮の核実験発表に対する安保理決議をめぐり、議論の焦点になっている国連憲章第7章は、常任理事国間で常に駆け引きの対象になってきた。安保理決議が強制行動を定めた同章に言及することに中国、ロシアはことごとく難色を示してきた。北朝鮮に対して米国は「軍事的な選択肢はない」としているが、過去の危機から、両国はいったん強制行動に踏み込めば、いずれは武力行使に道を開いてしまうとの不安を持つからだ。」

国連憲章の第41条をご覧下さい。

国際連合憲章

第41条〔非軍事的措置〕

「安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。」

ここに緑色の蔦がからまった美しい一棟の団地があるとしましょう。

その団地の各部屋には、それぞれの家族がつくったルールによって運営されている家庭が存在しています。

各家庭が国家だとすれば、家族のルールがそれぞれの国法ということになります。

しかし団地は水回りや電話回線、ケーブルテレビの引き込みやゴミ出しの日などで、棟としてのルール統一も要求されますので、家庭のルールを超越した棟としての自然発生的なルールに、各部屋は時に従う事を要求されます。

これがいわば国際法です。

たとえばこの地上を海洋法や航空法などの国際法が各家庭の自然な納得済みで覆っています。

ところでこの団地には、お金持ちの家族やPTA会長さん、警察署長の一家など、数家族の有力な家庭も入居しています。

この有力な家族達は団地内での大きな争いごとのあと、「この団地の平和をぜひ私たち有力な家族のチームで維持していこう」と主体的に自警団を結成しています。

自警団には一応団地に住むほとんどの家族が加盟していますが、その意思決定は、もっぱら有力な数家族の意図の下運営されています。

乱暴に表現することが許されるなら、これが国連とその安全保障理事会です。

もし自警団のルールが、即、団地のルールになるなら、それを行使することになんら躊躇はいらないはずです。

なぜ国連憲章7章41条はその実行を躊躇させるのでしょうか。

それはひとえに国連憲章が、「純粋な意味での国際法の範囲とは重ならないのではないか」という疑問点に起因しています。(私見)

国連という自警団は現実に、地上の和平に必須といえるでしょう。

しかし41条の条文をもう一度よくお読み下さい。

非軍事的措置の実行は安全保障理事会、すなわち五カ国の常任理事国と十カ国の非常任理事国という少数の有力な家族に意思決定を任されています。

これはそのあとの42条、軍事的措置においても同じです。

ところですべからく法というものは、各条文が導く問題解決能力よりも、公式ルールを定めて、それを全員が納得して維持しているという、状態そのものに真価があると考えられます(私見)。

すると私たちの頭には常によぎるものがあるのです。

自警団には加入しているとはいえ、実質的にほんの五家族によって行われる決定を果たしてそもそもの団地全体のルールと呼んでよいものなのかと。

(しかもこの五家族は、入れ替わることさえありません)

国連憲章の非軍事的制裁の執行がためらわれるのには、必ずしも納得の得られない可能性がある条文の強権を発動することは、逆に国連憲章そのものの足元を危うくするからだと考えられます(極私見)。

なんなら自警団のあり方が団地の中で矛盾をきたさないためには、新しく考案しなければならない法的領域があるかもしれません。

残念なことにそれなしで幸せに暮らせる団地を想起できるほど、わたしたち住民が成熟期を迎えていないのは確かだからです。

 

 

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2005/08/31

法律が空に引いた白い線

仏政府が航空会社のブラックリストを公表、上空飛行が禁止に(WorldTimes)
「飛行禁止の航空会社は以下の通り。高麗航空(北朝鮮)、セントトーマス航空(米国)、国際航空(リベリア)、モザンビーク航空(モザンビーク)、プーケット航空(タイ)。」

ローマ法の土地所有権に関する原則をご覧下さい。

「Cuius est solum, eius debet esse usque ad coelum.」

(土地の所有者にはその上空もまた帰属することを要する)

*出典:ローマ法 第二巻 船田享二 岩波書店

セントトーマス航空の飛行機が柵もない空のどこを飛ぼうとも自由な気もしますが、その思想的根拠はどこにあるといえるでしょうか。

国家が領有する空域は対国家間において領空と呼ばれますが、この言葉によって国家の上の空には勝手に白線が引かれていることになっています。

なぜそのような空の区分けが許されるかについて、通説は主権説と呼ばれる学説を採用しています。

主権説は、土地所有権に関する上記ローマ法の原則である、「地の主は空の主にしてまた地下の主なり」にもとづくといわれます。

ローマ法が編纂されたのは6世紀ですので、約1500年前の人々はすでに空も国家の物と考えていたことになります。

その後現代に締結された「領海及び接続水域に関する条約」がその2条で「沿岸国の主権は、領海の上空並びに領海の海底及びその下に及ぶ」と明言し、空は国家という家庭の庭先なので、家主に勝手に通り抜けは許さないという思想が一般化しています。

セントトーマス航空等は、その機体や運行態度に十分な安全性を見られないとして、フランス政府から上空飛行の禁止を求められています。

空に国境はたしかにありませんが、そこに描かれた白線の歴史が1500年以上あるからには、その刻印は剥がし難いものです。

そのためセントトーマス航空のフランス上空飛行禁止という措置を法の歴史から再解釈すれば、それが国家主権の投影である以上、セントトーマス航空等が再びその空の白線を超えるためには、思った以上に矜持を正す必要があるといえそうです。

法理メール?

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2005/08/12

韓流ブームが融和する日韓併合条約の遺恨

キム・ヒソン、中山美穂と共演熱望(goo映画)

「韓流ブームについて「こんなに長く続くと思わなかったです」と驚きながら「これから日本に来る機会が増えるかもしれません」と笑顔を見せた。」

韓国併合条約の第1条をご覧下さい。

韓国併合ニ関スル条約

第一条 

「韓国皇帝陛下は韓国全部に関する一切の統治権を完全且永久に日本国皇帝陛下に譲与す」

わたしたちの住む、弓なりの島に向かっては、中国やロシアという列強があるアジア大陸から、ちょうど朝鮮半島が指さすように突き出ています。

このためかつての私たちの国は、朝鮮半島が中国やロシアになってしまうことは、日本が背中から銃を突きつけられているようなものだと考えました。

そこで朝鮮半島をめぐって日本と中国、ロシアで戦争が行われ、それが終わった1910年、私たちの国はお隣の国と日韓併合条約を締結、朝鮮半島は日本の一部であることになりました。

しかしそれは条約(国家間の合意)と呼ぶにはあまりにも一方的な内容であったため、1945年に私たちが戦争に負けるとすぐ無効であることが宣言されています。

そしてこの日本に朝鮮半島を35年間併合させた、日本語にしてたった39文字の日韓併合条約第一条が、戦後に生まれた私たちにもさまざまな禍根を今もつきつけてしまっています。

そこには不幸な出来事と互いの拭いがたい認識のすれ違いが重なっており、もはや終わってしまった先代の戦争を呆然と見つめるしかない世代には、この問題をこじらせることはあっても解決することは不可能なのではないかとさえ誰もが思いこんでいました。

しかし近年、韓国のTVや映画に乗って韓国のいい男やいい女がさっそうと現れ、日本の婦女子を虜にするという事態が起こりました。

鼻で笑っていた男性陣も、韓国の緊張感に満ちた優れた映画を前に目を奪われ、かつて誰も提示しなかったようなスマートなアイディアで、両国の間に横たわる少なくとも感情レベルでの行き違いをゆっくり融解させようとしています。

私たちが日本人に生まれてきたことさえ偶然でしかありませんし、朝鮮半島にも過激な人たちばかりでなく、私たちとそっくり同じような考えを今日もハングル語でタイプしている人たちがいるかもしれません。

歴史問題という私たちのあずかり知らない時代に起きた鎧を先人に身につけさせられるまでは、どちらに生まれようが色のない命をもって生まれてきた一個の人間にすぎなかったはずなのですから。 
 

法理メール?

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2005/06/16

高飛びの道具はヨーロッパ人権条約

銀座の35億円貴金属強盗、男女を欧州で拘束(Yahoo)
「日本とセルビア・モンテネグロの間には、犯罪人引き渡し条約が結ばれていないため、2人の身柄は日本に移されず、現地の国内法に基づいて処罰される見通し。」

通称、「ヨーロッパ人権宣言」の第3条をご覧下さい。
 

人権及び基本的自由の保護のための条約

第3条(拷問の禁止)

「「何人も、拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰を受けない。」

(原文)

Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms.
Article 3 Prohibition of torture.
No one shall be subjected to torture or to inhuman or degrading treatment or punishment.」
 


一般国際法上は、犯罪人の引渡しは国家の義務ではありません。

よってこれが執行されるときは各々の国同士で結んだ条約にのっとることになります。

また正規の引き渡しがいろいろややこしい障害で難しいとき、犯罪人引渡しは請求国を送還先とする退去強制措置をもって行われることがあります。

この裏技を偽装引渡しといいます。

公のまな板を通過していないので、これをやられると一番まずいのは犯罪人本人の取り扱いです。

銀座の外国人強盗団の引き渡しは日本国によって公式に要請されていますので、この点犯罪人グループの人権は確保されているように見えます。

細かい法的取り決めは別として、本質的には一体何がヨーロッパから犯罪人たちをひきとることを阻んでいるのでしょう。

この本質を扱った判例にゾェーリング事件というものがあります。(参照:現代国際法講義 有斐閣

その事件では、死刑があるアメリカ・ヴァージニア州から、死刑のないイギリスに逃げていた殺人犯の引渡しが問題とされ、ヨーロッパ人権裁判所は、死刑が執行される可能性がある以上、冒頭ヨーロッパ人権条約第三条の違反を生じさせると判示して、引き渡し条約があったにもかかわらず引き渡しを許否しました。

ヨーロッパは本質的に日本の死刑制度を継続している根本的精神構造を警戒しています。

(セルビア・モンテネグロも欧州評議会に加盟しており、欧州の意識の一部となっています。)

法律を学ぶ人は誰でも、憲法において世界人権宣言にさらっと触れますが、実際に監獄で拷問を受けている人、たとえば先般表面化した名古屋刑務所での虐待を受けていたような人たちは、まさか世界人権宣言で実際に自分が拷問から助かるとは思っていません。

それは所詮ただの宣言にすぎないため、彼の刑務所での扱いをただす術にはなりえないのです。

そのためその後、国際人権規約自由権規約が手当され、一応拷問を科す国家は国際的に避難されることになりましたが、それでも実際に犯罪人への不要な拷問の実態は外に出す手段がありませんでした。

そこで欧州各国はヨーロッパ人権条約を締結し、檻の中の地獄をせめて欧州内では描かせないように実効性を確保しています。

しかもこれを扱うヨーロッパ人権裁判所は国家を超えて設置されており、条約に締結したどの国の政府からも自由な立場で裁定を下せるという実効性の確保に成功しています。

そしてそれらを成功させた歴史をささえたのは、各国民の共有する幼い人や貧しい人にもある「命の位」に対する意識に他なりません(私見)。

日本で大々的に基地を展開し、引き渡し条約が存在する米国でさえ、日本の司法システムにおける犯罪人の権利保護システムを不十分と見て、場合によっていまだに犯罪人を引き渡すのを拒むことがあります。

刑務官が受刑者に拘束具を着せたまま行う虐待よりもさらに先にある国家による断命、死刑に対する私たちの意識がもしこの先変わり、人権裁判所の活動を日本政府も受け入れるようなが時代がきたならば、強盗団のメンバーとしては、欧州が引き渡しを拒むような別の国を選び直して宝石を漁らなければならないはずです。
 

 
法理メール? 

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2005/05/30

その罪の構成要件は戦争に負けること

日本政界要人の戦犯無罪発言を批判 中国外交部報道官(人民日報)

Charter of the International Military Tribunal for the Far East
訳名、極東国際軍事裁判所条例のArticle 5 (a)をご覧下さい。

Article 5

(a) Crimes against Peace:
Namely, the planning, preparation, initiation or waging of a declared or undeclared war of aggression, or a war in violation of international law, treaties, agreements or assurances, or participation in a common plan or conspiracy for the accomplishment of any of the foregoing;

[私訳]

「(a) 平和に対する犯罪:
立案、準備、開始あるいは公然か無申告の侵略戦争、国際法、条約、協定あるいは保証に違反した戦争、あるいは先のもののうちのいずれかの完成のため共通の計画か共謀への参加の行うこと。」
 

極東国際軍事裁判所とは、前回の戦争で負けた日本の重大な戦争犯罪人を裁くため、ここ東京に設置された裁判所のことでした。

この場所の裁判を東京裁判といい、長大な時間の記録映画にもなっています。

(大川周明が東条英機の頭をうしろから叩くシーンで有名です。)

ここで戦争犯罪とは、戦争に際して行われた国際法上の違法行為のことですが、歴史は常に勝者側によって再定義され続けてきたことに注意が必要で、戦争犯罪の定義もいくらでも再解釈が可能です。

本来毒ガスや捕虜の虐待を禁止することを意味する「戦争犯罪」に、前回の戦争ではドイツと日本に対して「平和に対する罪」と「人道に対する罪」が加えられました。

その内、「平和に対する罪」がアーティクルファイブの(a)、日本での通称名がA級戦犯ですが、それはランクではありませんので、正しくは (a)類戦犯とでも呼ぶほうがより理解が通る気がします(私見)。

大川周明は東京裁判を「すべて茶番だ」と表現したと伝えられていますが、A級戦犯として絞首刑に処された東條英機も、まさか60年たっても常任理事国入りに関する政治的駆け引きの材料にされるとは予測できなかったでしょう。

A級戦犯、すなわち「平和に対する罪」の「平和」とは、他国の平和、つまりよそ様の台所にどかどかと乗り込んでいく侵略戦争を企てた罪を意味しますが、現在のイラクの情勢をみても、その行為が国際通念上、侵略戦争だったことになるかどうかは、最終的な決着をみるまで誰にもわかりません。

確かなことは、あらゆる政治的思惑を捨象して、そこにある現象だけを直視すれば、子どもの足を吹き飛ばし、母親の腹に穴を開ける殺し合いを私たちはこれまでも続けてきたし、今日も砂漠で続けているということだけです。
 

 
法理メール?

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