2008/05/04

高級な暖簾で残飯を売ろう

船場吉兆、使い回し「20年以上」…関係者証言(読売新聞)
「同社関係者によると、使い回しは、1991年に法人化される前の「吉兆船場店」時代からで、少なくとも20年以上にわたって続いていた。客が手をつけずに回収された銀ダラやハモ、牛肉などの焼き物を再び調理して提供していたほか、折り詰め弁当に入れることもあったという。また、刺し身に使うワサビは、客がはしをつけて半分ほど残った場合も回収してしょうゆに混ぜ、「ワサビじょうゆ」として別の料理に使っていた。うな丼は電子レンジで温め直したうえで器を替え、石焼きにする魚介類、フルーツゼリーなどはそのまま別の客に出すこともあったという。」

食品衛生法の6条4号をご覧下さい。

「6条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

4.不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。」 

食品衛生法とは、その第一条によれば飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止しようとしている法律です。

そこでいう飲食に起因する危害とは、飲食物に起因した危険という意味よりは広くなります。

その文言は直接飲食する食品のみならず、飲食行為に関連して生じる危険、たとえば食器や包装紙などの衛生も守備範囲としています。

さらにはおもちゃや洗浄剤をもその各種規制の対象としており、その意味で非常に警戒心の高い法律だといえるでしょう。

そして細菌による食中毒のほか、化学物質を原因とする食中毒、経口伝染病、異物の混入も食品衛生法上にいう「衛生上の危害」に含まれます。

総じればそれらの危機を産むような商人の営業態度に対して罰則を用意することで一般予防を図り、また事故発生後には迅速に処置を講じようとする法律、それが食品衛生法だといえます。

ところでその6条4号では不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがある食品の提供を禁止しています。

6条は食品衛生法という規制の骨格をなす基本的な規定です。

その4号はあきらかに危険な食品の提供禁止を定めた1、2、3号以外でも、やはり危険が憂慮される性質のものを提供することを禁止しています。

不潔と異物が例示されていますが、4号の守備範囲はそこにとどまらないのはもちろんのことです。

「その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの」という文言は、条文の網からすり抜けようとする商人の横着な態度から消費者の健康を守ろうと、あらゆる事態へ向けて広く張り巡らされているのです。(以上参照:新訂 早わかり食品衛生法 第2版 [食品衛生法逐条解説]

更にはこれに違反した商人には、71条1号が3年以下の懲役又は300万円以下という重い罰則を用意しています。

このように食品衛生法のプロポーションを眺めてみれば、わたしたちは口に入れる物を商材とする商人に対しては、慎重のうえに慎重な安全確認を要求しつづけてきたことがわかります。

高名な料亭の調理場で食品の使い回しが開店当初からあったことが暴露されましたが、食品衛生法6条4号にいう「不潔」という言葉は、必ずしも科学的に測量できるものでもなく、いわば感覚的な判断基準です。

よって、ことによるとその料亭の行為は厳密に言うと6条4号の構成要件該当性を充足させることなく、食品衛生法の手をすり抜けてしまうかもしれません。

しかしながら、このような人たちが商人として掲げてきた暖簾を、わたしたちがありがたがることだけは、もはやないかもしれません。

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2007/06/24

食肉加工という、不思議な大木から垂れる蜜

ミートホープ 肉に着色、水で増量か 偽装の実態が日報から次々(北海道新聞)
「原料の量と製造量に関し、つじつまのあわない記載がみられる投入原料日報「別の食肉加工業者によると、ひき肉の製造過程では、機械に肉がついてしまうため、原料に対し製造量が増えることはないという。ミート社は鶏肉の場合でも「肉十五キロに水五キロを混ぜ、二十キロにした」との情報もあり、水で肉の量を増やす偽装がひんぱんに行われていた可能性もある。」

ハム類の日本農林規格の第4条をごらんください。

第4条(抜粋)

「ボンレスハム、ロースハム及びショルダーハムの規格は、次のとおりとする。

標準

赤肉中の水分 75%以下であること」 

食肉流通の過程で、関係者にどのように利益が反復創造される余白があるのでしょうか。

この点を鋭く指摘した書物に、立花隆さんの「農協」という文献があります。

昭和54年の著作のためディティールは現在と異なる部分もありますが、非常に重要な指摘が存在しますので、三箇所を加筆訂正せずそのまま引用してみます。

「輸入肉はキロ三百円から六百円の調整金を上乗せされているとはいえ、国産肉よりはるかに安い。正規ルートからの横流しで中間マージンをとられてもまだ安い。だから国産肉と混肉すれば、小売りは相当のマージンを稼ぐことができる。肉の小売業界も小規模店が多く、経営は必ずしも楽ではない。だから、小規模の米の小売業者が混米で稼ぐように、肉屋も混肉で稼ぐのである。どんな流通業界でも、一物多価あるいは多物一価の流通を人為的に強制させようと思っても、流通ルートの中を流れるうちに、自然に調整されてしまうものである。だから、畜産振興事業団が調整金をとらずに、もっと安く肉を放出すれば輸入肉がもっと安くなるはずだという議論があるが、それは誤りで、そんなことをしても、放出割当権者、買参権者をふやすだけで、差益のほとんどすべては流通各段階の業者に吸いとられて終わるだけというのが経済の現実原則なのである。」

「輸入牛肉は国産牛肉にくらべて安すぎるために、どうしても利権問題となる。数年前のビーフ・マフィァ騒ぎのように世の批判をあびて、いろいろ手直しを重ねるうちに、いよいよ複雑なものになってきたのである。現在その差益は、先に述べたように、流通各段階の"うま味"として残っている分もかなりあるが、かつての利権的差益の大半は、畜産振興事業団の調整金として吸いとられている。その金額が五十三年で実に四百五十億円にものぼる。これは、畜産振興事業に対する助成金として使われることになっている。そこで今度は、輸入牛肉の配分にあずかること以上に、この助成金の配分が利権の対象になっている。その配分権を握るのは、事業団と農水省の畜産局である。補助金が大半を占める農水省の予算は、ただでさえ政治が介入した分捕り合戦になっているのに、国会の議決が必要な一般予算とちがって、事業団の助成金は農水大臣が最終決定権を持つ。実質上は畜産局が配分権を持ち、大蔵省にわずらわされることがない第二の予算となっている。その配分には予算の配分以上に政治家が介入し、またその配分や出資の受け皿のための団体、輸入牛肉配分団体が山ほどあり、そこには、しばしば農水省の官僚OBが天下るという乱れた関係もある。そうした団体のなかには、たずねてみると事務所が同じで、看板が二枚かかっているというようなところもあるほどだ。この巨額の調整金もよく考えてみると、最終的には消費者が肉の購買を通じて支払っている一種の間接税なのである。」

「実際、一般の食肉加工品の品質はかなりひどい。ハムなどは、豚肉に注射針で味つけのビックル液を大量に(重量比で肉の三割、四割は当たり前、ひどいときは七割も)ぶち込み、それをマッサージ機にかけて浸透させ、入れすぎたビックル液が肉と分離しないように結着剤の重燐酸塩を加え、増量剤として大豆タンパク、カゼイン、脱脂粉乳などを「調味料」の名目で加え、場合によってはJAS規格の検査をとおすために、検査用の製品を別につくるということまでおこなわれるという。業界内部でも、最近あまりに品質低下がいちじるしく、消費者の反発をまねきかねないから、少しやり方をつつしもう(やめようではない)と、そうした操作の自粛基準なるものを業界団体でもうけたほどだ。だいたいJAS規格そのものがひどいもので、ハムというのは本来塩漬け肉だから、生肉より水分が減らねばならないのに、生肉で五二・五%の水分があるロース肉を使用したロースハムの水分基準がなんと「六五%以下」なのだ。計算してみると、ロース肉一〇〇グラムに三六グラムの水を加えなければ六五%の水分にはならない。これでは農水省がハムに水をぶち込むことを奨励しているようなものではないか。」

(以上引用:農協 立花隆 朝日新聞社出版局)

昭和54年当時、立花さんによりハムの水分65%という点に視点の緩さを指摘されたJAS規格ですが、現在の4条は特級、上級で72%、標準で75%とさらに規制が緩くなっています。

いうまでもなくハム類のJAS規格第4条は、消費者の意思という私的自治の根本と、業者の利益追求のバランスをとろうとする立法趣旨です。

その大切な数字がいかなる力学によってさらに消費者に不利に動いたのか、それは行政の進化なのか退化なのか、単なる消費者であるわたしやあなたにはわかりません。

そして食肉加工品をめぐるこの理解の難易度にこそ、行政も含め関係者がこぞってキャッシュ・ジェネレータを備え付けられるスペースが存在しているのだといえそうです。

 

 

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2005/08/17

干からびたチーズと微生物の仕事

首相公邸“干からびたチーズ” 実は仏産高級品(Yahoo)

「実はこのチーズ、今月六日夜に首相公邸で首相と会談した後、森喜朗元首相が「硬くて歯が痛くなった」と記者団に不平を漏らした酒のツマミ。これが話題になり、首相がお店に注文。「おいしいじゃない」という林氏に、首相は「(森氏に出したときは)チーズの名前を知らなかったんだけどね」と満足そう。」

食品衛生法の第9条をご覧下さい。

第9条

「第1号若しくは第3号に掲げる疾病にかかり、若しくはその疑いがあり、第1号若しくは第3号に掲げる異常があり、又はへい死した獣畜の肉、骨、乳、臓器及び血液又は第2号若しくは第3号に掲げる疾病にかかり、若しくはその疑いがあり、第2号若しくは第3号に掲げる異常があり、又はへい死した家きんの肉、骨及び臓器は、厚生労働省令で定める場合を除き、これを食品として販売し、又は食品として販売の用に供するために、採取し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない(以下略)。」 

ナチュラルチーズは牛乳に酵素を加えて固め、水分を切ったあと微生物の力を借りて発酵させただけの食べ物です(乳等省令 2条17)。

ナチュラルチーズのままでは酵素やカビが生きたままなので、ちょっとこわい気もします。

食品衛生法は、わたしたちが直接口に入れる食品の管理に必要な措置を講ずることで飲食による衛生危害を防止し、国民の健康の保護を図ることが目的の法律です(1条)。

なんだかナチュラルチーズなど発酵した乳製品は、とても食品衛生法が気にしそうな性質の食品ですが、厚生労働省は乳等省令の2条17号でナチュラルチーズを定義することで食品衛生法9条にある「厚生労働省令で定める場合」とし、厚生労働省の示した特定条件下でわたしたちが発酵乳製品に触れることを可能にしています。

発酵食品を人間が好むこと、またより「高級な発酵」を人が創作するため長い歴史で努力していることは、快感をシグナルとして人の体が微生物の働きを体内に取り込むことを肯定している証拠かもしれません。

現に放っておけば腐って終わる牛乳に微生物を投入することで、場合によっては驚くほど長期間保存が可能な食品を生み出すことができますし、微生物は発酵という仕事でたくさんの薬も作ってくれています。

なんでも地球の海水と、人間の血液の成分はほとんど同じなのだとか。

それを聞くと海中の主役が微生物であるように、人間の体がチーズのような微生物の仕事を欲するのも理解できる気がしてきます。

森元首相には、固めのナチュラルチーズであるミモレットがお口に合わなかったようでしたが、乳等省令2条がチーズを保護した法意から読めば、小泉さんの「森さん、どうぞ乳製品でぐっすり眠っていてください」というメッセージだった可能性も捨て切れません。

 

 

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2005/08/06

ジンギスカンキャラメルと甘いものを口に含む自由

まずいけど、なぜか売れる ジンギスカンキャラメル
「つい顔をしかめたくなるニンニクの味。「たいていの辛いことは忘れられます」(担当者)。 」

製菓衛生師法の第一条をご覧下さい。

第1条 

この法律は、製菓衛生師の資格を定めることにより菓子製造業に従事する者の資質を向上させ、もつて公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。

私たちの国がかつて世界と殺し合いをしていた60年前、砂糖は貴重な食材になった為国による統制下にあり、食べることもままならなかった終戦前後にはお菓子は全く製造できなかったといいます。

戦争が終わったちょうど60年前の8月15日以降、食糧事情は徐々に改善されはじめ、その日から4年経つとまずブドウ糖が統制されなくなり、また7年たってやっと砂糖も統制されなくなりました。

子供達は大人が空から爆弾を降らせなくなって7年後、やっとその幼い口にキャラメルを放り込む楽しみを許されたのです。

戦争が終わって26年経つと、チョコレートやビスケットなどの貿易が自由化され、それまで日本の子供達が見ることが出来なかった外国のお菓子もスーパーに並ぶことになりました。

つまり法律は砂糖製品の管理を、戦後の修復とともに徐々に解放してきたといえます。

いよいよお菓子は大量消費時代を迎え、外国製品との競争のなかで、食品添加物の使用も急増し、それにともなってお菓子の製造にたずさわる人の責任も大きくなってきました。

そういった時勢を受けて1966年に、衛生法規、公衆衛生学、食品学、食品衛生学、栄養学、製菓理論、製菓実技の7科目を履修した人材を育成するため、製菓衛生師法が制定されました(1条)。

このことは”甘さの自由”が最終段階に入ったことに対して、国民の健康を考慮することができるようになった国家が製造者に課した一定程度の重石であるといえます。

今や私たちはマズさをシャレで楽しむためだけにキャラメルを購入する自由さえ手に入れました。

そして私たちがマズいお菓子を食べる自由までたどり着くには、広島と長崎の街が吹き飛ばされ子供達が水を求めて次々川に飛び込んだ日からちょうど60年間かかっています。
 

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2005/06/25

くじらバーガーへの非難と選民思想

「くじらバーガー」を非難 英国の動物保護団体 (産経新聞)
「ロンドンに本拠を置く動物保護団体WSPAは24日、北海道函館市のファストフードチェーン「ラッキーピエロ」がミンククジラ肉で作った「くじらバーガー」を発売したことに対し「腹立たしい悪趣味な宣伝行為にすぎない」と強く非難する声明を出した。」

国際捕鯨取締条約の第3条をご覧下さい。

国際捕鯨取締条約
 
「第3条 締約政府は、各締約政府の1人の委員からなる国際捕鯨委員会を設置することに同意する。各委員は、1個の投票権を有し、且つ、1人以上の専門家及び顧問を同伴することができる。」

18世紀後半、イギリスで産業革命が起こりました。

紡績機や蒸気機関車の発明で手工業から大規模な工場生産に変わり、農業中心だったイギリスは世界各地から原料を輸入しては製品をつくり輸出する「世界の工場」と呼ばれるようになりました。

その象徴こそ、今名古屋で行われている「万国博覧会」であり、その第一回は産業革命華やかなりし頃のイギリスで、「みよ、イギリスの工業技術を」という意気込みのもと開催されています。

しかしあなたも中学校で習ったように、産業革命は生活をどんどん豊かにしたばかりではなく、それまで自分の口を自分で食べさせていた農民を、土地の囲い込みにより都市に追い出し、低い賃金で長時間人の仕事の為に奉仕する存在に変えました。

月給で生活する大量の労働者階級の誕生です。

さらに産業革命は、人工の爆発的増加の原因となりました。

そして今や人類は60億人となり、食物連鎖の頂点に立つ数としては不適切なまでにふくれあがりました。

これを最初に杞憂したのが「ローマクラブ」の発表した「成長の限界」という提言です。

捕鯨の禁止はこの「成長の限界」のなかではじめてうたわれましたが、食物連鎖をこわすきっかけをつくった産業革命の国の主役であるホワイトアングロサクソンが、ローマクラブを牛耳っているなどとささやかれています。

突然海の向こうから「おまえらの捕まえてる動物を殺すのをやめろ!」と怒鳴られても「え?」となったのが最初の日本人の正直な反応だったと思うのですが、きょとんとなったのはくじらを食べることを日本人の誰も「悪い」などと発想しなかったからに他なりません。

元々キリスト教信者にとって神は絶対的奇跡を起こす存在、人や人が食べるための動物は神が最初からこの地に創ったと信じており、そのため今日も何万頭もの牛の頭を切り落として血まみれにすることに抵抗はありません。

しかしダーウィンの唱えた進化論、すなわち猿から人が進化したとする考えに対しては、結果的に神の絶対を否定する思想として発表当時から激しい迫害が向けられており、現在でも欧米の信仰レベルでは根強い反発があります。

そのため欧米からは「神によって人の食べ物として創造されていないクジラ」を食べる私たちのような国に向かって、IWC総会で私たちの代表などに「野蛮人!」と罵る声が飛ぶことになります。

キリスト教を世界中に布教した時代から、彼らの哲学にはふつふつと「人が猿から進化した」とするダーウィンの進化論に対する反発が埋め込まれ続けている、それがクジラやマグロが私たちの食卓から姿を消そうとしている事の本質があるように思えてなりません。

国際捕鯨取締条約3条1項は捕鯨にかかわりがあろうがなかろうが、小さな国も大きな国も、いままでクジラなんて見たことのない暑い大陸の中央にある国でも一票をもつことを定めています。

このためかつてのイギリス支配下にあったような大陸中央に位置する小国までもが、欧米に同調して反捕鯨に一票を投じる事態となり、政治力学上優位な国にとって、3条1項はフェザータッチ・トリガーになっています。

個人的にはかわいいクジラやイルカをとってまで食べたいとは思いませんが、抗議活動が素朴な愛護精神からでなく、野蛮人と他民族を罵ることで、民族にも神が与えた階級があるとする選民思想を再確認しようとする団体が万が一にもあるとすれば、話の性質が全く異なってきます。

「あなたの祖先は猿だと認めますか?」

そんな質問が意外と反捕鯨勢力に属する人たちの素のリアクションを引き出すかもしれません。
 

 
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2005/06/24

穀物で世界をコントロールしよう

リンゴ検疫、日本敗訴の最終報告 WTO(産経新聞)
「日本の輸入リンゴ検疫制度が厳しすぎると米国が訴えていた通商紛争で、世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は23日、日本側敗訴の最終報告を公表した。リンゴの木がやけどのような症状を起こす「火傷病」に対する日本の検疫制度には科学的根拠がなく、WTO協定に違反しているとの米国側の主張を認めた。」

世界貿易機関を設立するマラケシュ協定、附属書2の17条第1項をご覧下さい。

第十七条 上級委員会による検討(常設の上級委員会)

「紛争解決機関は、常設の上級委員会を設置する。上級委員会は、小委員会が取り扱った問題についての申立てを審理する。上級委員会は、七人の者で構成するものとし、そのうちの三人が一の問題の委員を務める。上級委員会の委員は、順番に職務を遂行する。その順番は、上級委員会の検討手続で定める。」 

世界貿易機関、WTOはマラケシュ協定に基づいて95年1月に生まれた貿易調整機関です。

その仕事は各国に立つ不公平な法律的貿易障害を地均ししていこうというところにあります。

しかし一方でその理屈は貿易に用いることの出来る材料を持った富強国、あるいは輸出物をもつ国を現実的に統治している国の理屈であることは間違い有りません。

実際にWTOでは貿易に関して揉めに揉めた時、上級委員会に上訴することができますが、この上級委員会はたった七名の常任委員しかおらず、しかも事件を担当するのは三名だけです。

そして彼ら三名の出した結論には、日本は無条件に受諾しなければなりません。

果たして上級委員会を構成する三名の胸の内に弱小国家と強大国家の言い分が公平に存在できるものなのかとっても不安なところですが、現実に世界のトレードはこういう権力集中機構によって取り仕切られています。

人間がこれがなければ生きていけないもの、それは空気、水、そして食べ物です。

空気や水(雨)はさすがに特定国によるコントロールはできませんので、世界の富を握る国が世界を支配する最強のツールは食べ物ということになります。

他国の食料産業による市場コントロールによって、自国が従属させられる問題は俗に食料安保と呼ばれます。

もし各国の食料自給率が下がり、穀物メジャーが食料とその肥料や農機具、科学技術の輸入を全世界に強制できれば、食べ物は人の命にかかわるため、その支配力は目もくらむほどに強固になるはずです。

19世紀後半、アメリカに生まれた市場に株式を上場していない穀物財閥によって、世界の形は実際にそれに近くなっているといわれます。

欧州各国は食糧安保の観点から軒並み80%以上の穀物自給率を維持していますが、日本や韓国は30%を切っており、まさになすがままという状況です。

こうなってくると私たちの国の立法制度は、WTO上級委員会に座る三人の前にいかほどの力があるのかさえ疑わしくなってきますが、グローバリズムという、国によっては暴力に近い理念に基づきWTOは今日も貿易障害を地均しし続けます。

極論すれば、世界の飢餓に苦しむ10億の人と、肥満に苦しむ6億の人の命運はWTO上級委員会の三人の手に握られているとさえ言い換えることが可能です。

マラケシュ協定、附属書2の17条第1項により、地球上にそのような権力が集中する椅子が三脚しか設けられていないそのこと自体が、WTO設置の方向性を表しています。
 

 
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2005/05/18

狂牛病の抜け道と法の修正パッチ

近江牛偽装で新たに逮捕 牛の個体識別情報を偽造(産経新聞)

通称、牛肉トレーサビリティー法の14条をご覧下さい。

牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法

第十四条(と畜者による個体識別番号の表示等)

「と畜者は、牛をとさつした後、当該とさつした牛から得られた特定牛肉を他の者に引き渡すときは、当該特定牛肉に当該牛の個体識別番号を表示しなければならない。」
 

あなたがお店で売られている牛肉の素性が知りたければ、以下のアドレスから個体識別番号を使って検索できます。

http://www.nlbc.go.jp/

しかしそもそも未だパソコン用のWEB画面を読み込めるブラウザを標準装備した携帯が普及しきっていないのが第一の問題点です。

いちいち自宅に帰って調べてからスーパーに戻ってくる奥さんはいません。

次に店舗に検索機械がおいてある場合も操作性の悪さが第二の問題点です。

地元恵比寿三越の地下食品売り場にも設置されていますが、実際あれを操作している奥さんを未だに見たことがありません。商品のバーコードを照らせば自動的にデータが表示されるくらいのものでなければ実効性がないと考えます。

そして第三に決定的に問題なのは、そもそも個体識別番号が偽装された場合、消費者はでっち上げの情報を一生懸命追いかけた上で、偽装された安心感のもとにその肉を口に入れることになるという点です。

平成13年9月、国内で初めて牛海綿状脳症(BSE)が発生し、その対応策として、平成15年6月に牛肉トレーサビリティー法は制定されました。

しかしその罰則は、23条により30万円以下の罰金でしかありませんので、数百万円、数千万円の利益を上げられる目算があれば、あえて30万円を危険コストと割り切って堂々と偽装を繰り返す業者さえでかねません。

トレーサビリティ法、すなわち情報追跡可能性確保法(私的翻訳)と名乗っているところからも明らかなように、本法の直接のターゲットは消費者の命の安全であり、間接のターゲットは信頼確認の道をつけることによる業界の発展であると解されます(1条)。

この仕組みに対して横着をし始める業者が現れた場合に私たちが受け取る不利益とは、目に見えない恐怖に対して私たちは方策をとることができないのだという無力感のことです。

そもそも狂牛病はその実態が未だはっきりと発表されておらず、ことによってはいままでにハンバーガーを食べたことのある人全てが感染している可能性さえあると指摘されるほど、おかしな状態の牛の屠殺→食肉化は昔から日常的に行われてきたのだと及び聞きます。

それゆえ牛肉トレーサビリティー法は、得たいの知れない狂牛病に対して国内で私たちが採れる最善の方策だったはずであり、個体識別番号に対する法律を誠実に尊守する態度は、場合によっては人の生死に関わる情報の土台になる部分です。

トレーサビリティー法を踏み越える人を軽罰で放免しつづければ、農林水産省が巨額を投じたシステムは業者次第で実態から乖離してしまう可能性を証明しつづけ、消費者からは何のことはない、あれは形を変えたいつもの無駄な公共工事だったのかと評価されることになります。

一方で業者にしてみても、その法律の形が十分に業界から合意を得ていなければ、談合に対する独占禁止法がごとく、数十年に渡って「実態を理解していない法律だ」と業界から無視され続けるところに落ちかねません。

法律を小馬鹿にする業者には別な形のペナルティを与え、法律が必要以上に業界を圧迫するのならその微調整を施すなど、私たちは最善策の実効性をいつまでも模索しつづけなければなりませんし、それが生きていくということのたどたどしい一側面ではあります。
 

 
法理メール?

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